約20年ぶりの新紙幣発行に沸いているが、お札デザイナーの先駆者として活躍した県出身者がいたことをご存じだろうか。その人は高岡市長江出身の大野為次(ためじ)さん(1892~1991年)。聖徳太子の千円札や岩倉具視の五百円札など、昭和初期から戦後にかけて数々の紙幣の図案を手掛けた。人物像のヒントを探るため地元を訪ねたところ、絵画や墨絵が残されており、類いまれなる画力の片りんを感じることができた。

北日本新聞社の取材に応じる90歳ごろの大野さん

13種類もの紙幣を世に送り出す

 まずは郷土の歴史に詳しい元高岡市立中央図書館長、太田久夫さん(87)=高岡市本丸町=に、大野さんがデザインした紙幣を教えてもらった。戦中戦後は毎年のように紙幣が発行されるなど、現在とは事情が異なるだろうが、1931~53年に13種類ものお札を世に送り出していた。

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