緻密で繊細な木彫で知られる岩崎努さん。県水墨美術館で開催中の「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」展(2月4日まで)にも出品している。壮大なレリーフから、野菜や果物をモチーフに本物と見まごうばかりの作品を生み出す。作品の隅々に込めた思いや創作の背景を聞いた。(聞き手・田尻秀幸、撮影・竹田泰子)

——地震は大丈夫でしたか。

 4カ月かけて作った作品が目の前でバラバラになりました。でも命や家族を失った方を思えば大したことじゃない。作り直せばいいんです。

 

——趣のある作業場ですね。

 建物は元々診療所だったんですよ。だいたい築100年かな。そこをギャラリーにして、工房と住居部分を増築しました。ローンは70歳まであるので、まだまだ頑張らないといけないんですが。

——毎日どういうペースで創作しているんですか。

 午前9時過ぎに始めて、夜は12時までかな。息抜きはその合間にご飯を食べて、犬と遊ぶ程度です。作るのは好きなんでしょうね。嫌だとは思わない。時々は逃げ出したくなりますよ。誰も助けてくれない孤独な仕事ですから。

 

——今回出品した「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」展は県水墨美術館を含めた全国7会場で開催されています。

 企画展をきっかけに作品しか知らなかった作家さんと近しくお話しすることができました。自分が30年以上やってきた木彫の核心めいたものをすぐに共有できました。これが一番の収穫ですね。

——チラシにも掲載された「さくらんぼ」が好評ですね。軸のうねり方、小さな傷、微妙な丸みと本物と見分けがつかない。お客さんも熱心に見ていました。

 僕は「竹の子」推しだったんですけど、あまり反応がない(笑)。見るところが違うというか、作り手が思ってるのとは違うんですね。この竹の子の表面にある筋は、特注の0・2ミリの丸刀ですべて平行に入れています。それをノーミスでやらないと、あの皮にはならない。正直苦行です。さくらんぼも難しいですけど、竹の子の方が圧倒的に作業時間が長い。

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