漫画は大好きだけど、漫画の展覧会ってどうなのかしら-。ひそかにそんな思いもあったが、ときめきトゥナイト展(京都会場)に入るとすっかり忘れてしまった。子ども時代の記憶がよみがえり、ただただ懐かしい、かわいい、楽しい。感情が揺さぶられっぱなしだった。これが「エモい」ということか。(この連載は、12月22日に富山で開幕するときめきトゥナイト展を前に10月の京都会場の様子をお伝えします)

ときめきトゥナイトには、吸血鬼の父と狼女の母の間に生まれた魔界人の女の子・蘭世(ランゼ)、蘭世の弟・鈴世(リンゼ)に恋した人間の女の子・なるみ、蘭世の娘・愛良(あいら)の3人の主人公が登場する。ファンが多いのは蘭世のようで、京都会場でも「蘭世~」「かわいい~」と、キャッキャと喜ぶファンの姿があった。なるみ編から読み始めた自分からすれば、なるみちゃんも相当かわいらしく、分不相応にもなるみちゃんのボブやお姫様カットに憧れたものだった。

まさかのブーイング!?
連載当時の読者はもっと直球だったようで…。作者・池野恋さんの自伝的エッセイコミック「ときめきまんが道-池野恋40周年本-」によると、なるみ編のスタート時、「主人公は蘭世以外認めない」「こんなのときめき~じゃない」など、作者の「想像を超えるブーイング」が寄せられたという。ええ!こんなにかわいいのに。

リアルタイムでは逃してしまったが、りぼんマスコットコミックス1~16巻の蘭世編を後から読むと、蘭世の外見のかわいさはもちろん、お人よしなところ、おせっかいなところ、心の強さなどなど、たしかに魅力はあふれんばかりだった。直球の抗議も、蘭世編への愛の大きさゆえにということだったのだろう。
これこれ、使ってた!
会場内で一番「エモさ」が爆発してしまったのは、りぼんの付録のコーナーだった。愛良ちゃんのビニールバッグ、紙バッグ、自分で組み立てて使う収納ボックス…。「これ持ってた」「懐かしい」と声に出してしまいそうだった。すると隣で「お母さん、これ全部持ってたで~」との女性の声が。小学生らしき娘さんと一緒で、続けて「(付録を)使わなきゃよかったなぁ」と娘さんに話しかけていた。お気持ち、よ~く分かります。

会場には付録用の原画カットが展示されていて、細部までの丁寧な描き込み、キュートな色合い、キャラクターの服装、世界観の愛らしさに圧倒された。作品だけでも大変だろうに、付録にもこんなに真剣勝負で向き合っていてくれたのか。作者の心意気にしびれる思いだった。


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【ときめきトゥナイト展が富山にやって来る(3)】に続きます。随時掲載。