少女漫画雑誌「りぼん」(集英社)の黄金期を彩ったロングヒット作品「ときめきトゥナイト」の展覧会が12月、富山にやって来る。蘭世(ランゼ)編、なるみ編、愛良(あいら)編の3部作の原画を中心に、ふろく用のカットなど300点以上を展示する初の大規模展覧会だ。30年前に少女だった記者も愛読者の一人。いても立ってもいられず、自宅の色あせたコミックスを手に、先行開催されていた京都会場を訪れた。

ときめきトゥナイト展京都会場の入り口(©池野恋/集英社)

 記者は、池野恋さんのときめきトゥナイトの連載が始まった1982年生まれ。80年代後半から90年代前半にりぼんを毎月楽しみにしていた。当時、ときめきトゥナイトのほか、水沢めぐみさんの「空色のメロディ」「姫ちゃんのリボン」、吉住渉さんの「ハンサムな彼女」、岡田あ~みんさんの「こいつら100%伝説」が好きだった。ああ、ただただ懐かしい。

3人の主人公は愛くるしく強い

 同世代の方には分かるであろう。記者にとって、ときめきトゥナイトの主人公は、なるみちゃんと愛良ちゃんだった。そう、私はコミックス1巻から16巻にわたる蘭世と真壁くんの物語をほとんど知らなかった。

 ときめきトゥナイトは普通の恋物語ではなく、コメディーとSFの要素も満載。人間界や魔界、妖精界など壮大な世界の中で繰り広げられる。なるみ編では、なるみが幼い頃に病気で命を落としかけただけでなく、婚約者である鈴世(リンゼ)くんがアイドルに思いを寄せられたり、二重人格になったり、なるみのことだけ忘れてしまったりと、劇的な展開が続いた。蘭世、なるみ、愛良の3人の主人公はそれぞれに愛くるしい。そして、かわいいだけではなく、心が強いのだ。あんなに線の細い少女たちなのに。

自宅にあったときめきトゥナイトのコミックス(©池野恋/集英社)

生の原画の力に圧倒される とにかく、かわいい!

 蘭世と真壁くんの物語をほとんど知らなかったからだろうか。10月下旬に京都会場を訪れた時、一番に圧倒されたのは蘭世のかわいさ、真壁くんのかっこよさだった。

 洋画や日本画の展覧会もそうだが、印刷(図録)ではどうしても表現しきれない、生の絵ならではの力が原画にはある。その力に圧倒された。とにかく絵がかわいい。蘭世が、とにかく、かわいい。今の感覚で言うなら「昭和レトロ」な感じ。子どもの頃より、今の方がかわいさが染みるというのも不思議な感覚だった。

 ポップな色使いも淡い色使いも、センスにあふれている。原画イラストの中には、紙が水のにじみでたわんだものもあり、こうしてあの淡い色使いが生まれたのか…とワクワクした。ちなみに、来場する時期でもらえる絵柄が変わる入場特典のシールも蘭世だった。これも何かの縁かしら。

入場特典のシールは蘭世(中央)だった(©池野恋/集英社)

 さて、いよいよ京都会場の中へ進むとしよう。

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【ときめきトゥナイト展が富山にやって来る(2)】に続きます。随時掲載。次回は11月15日に掲載します。

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