「オール富山県産」と銘打ったますずし「伝承館ますのすし」が10月中旬、発売された。入善海洋深層水で育ったサクラマスを使い、米も県産だ。「天然サクラマスと食べ比べてみませんか?」。記者の元に、朝日・入善担当の先輩記者から連絡が入った。水質がきれいで冷たくミネラルの多いという深層水育ちのサクラマス、果たしてそのお味は-。

天然は幻の中の幻
「県産サクラマスは人生この先、二度と食べることはないかもしれない…」。そう思っていたのは今年7月のこと。県内の河川で釣れた約4・5キロの大物サクラマスを食べる機会に恵まれた。サクラマスの環境について知ってもらおうと紙面とwebunプラスに記事を書いた。先輩はこの記事を思い出した、というわけだ。
かつてサクラマスは神通川で年間200トン近く揚がっていた。ますずしといえば神通川のサクラマスであり、富山市内にますずし店が多いのはその名残だ。
その後、ダム建設、河川の工事、温暖化など、サクラマスにとって厳しい環境の変化が続いた。近年では県産サクラマスは「幻の中の幻」。漁協の会員ですら、シーズン釣果ゼロは珍しくない。
しっとり、上品な脂
これまで養殖のニュースはよく見ていたが、ますずしとは結び付かなかった。「まさか養殖で県産サクラマスのますずしが実現するなんて」。この日たまたま仕事が休みだったので、先輩の知らせを受け、喜び勇んで入善へ車を走らせた。
ますずしと参考資料をもらい、その日のうちに自宅で開封。きれいな色だ。身は生っぽく、けっこう厚い。しっとりとした食感だ。

県産米を使った酢飯は酸っぱすぎず、やわらか。脂ののったサクラマスの身の弾力とよく合う。口に含んでも臭みは一切なく、上品な脂だった。2切れだけ試食するつもりが半分、1人で食べてしまった。先輩いわく、ますずし製造の源(富山市)の中でも熟達した3人の職人が作っているという。奇をてらわない正統派のますずしだ。職人の技が詰まっているのだろう。
こりゃたまらん
サクラマスにほんのり塩味も感じた。これは海洋深層水で育ったからだろうか。ここで先輩記者の言葉を思い出した。