昔の常識は今の非常識か-。富山で異常な暑さが連日続いた今夏、「犬の外飼いを見直すべき」という投稿が北日本新聞「あなたの知りたいっ!特報班(知りとく)」に寄せられた。田んぼに囲まれたわが家は平成の初め、外で犬を飼っていた。あの頃、最高気温30度で「暑い」と言っていたが、ことしの8月は「30度か、今日は涼しいね」という具合。環境はすっかり様変わりした。昔の常識で犬を飼い続けると「虐待」と見られることもあるかもしれない。

悪気がないから「指摘しづらい」
「日中、熱いアスファルトの上を散歩させている犬を見た」「外でぐったり横たわっている犬を見ると心苦しい」。SNSのX(旧ツイッター)ではことし、こういった投稿が見られた。
犬はかつて番犬として外で飼われることが多かった。県内でも「飼い主に悪気がある訳ではない。『昔からやってきたから』という感じ。指摘しづらい…」といった本音を漏らす人がいた。
外飼いは減少傾向
ペットフード協会(東京)の全国調査によると、主に屋外で飼育される犬は、2018年の約68万5000頭(全体の9%)から22年は約38万9000頭(同5・5%)に減った。
今は家族の一員として家の中で犬を飼う人が増えた。一方、犬の性格や体質にもよるが、外で過ごす時間は刺激やリフレッシュにもなる。

そもそも犬は暑さに弱い
犬の暑さ対策について、あらい犬猫病院(富山市)に聞いた。
犬種にもよるが、犬の祖先はオオカミで北方原産であり、暑さには弱い。中でも、シベリアン・ハスキー、パグ、シー・ズー、フレンチ・ブルドッグなどは特に弱いので要注意だ。
柴犬や雑種など昔から日本にいる犬を外で飼う人が多いが、近年の暑さは経験したことのない記録的なもの。さらに犬は体高が低く、アスファルトやコンクリート(真夏は50~60度に達する)の照り返しをもろに受けるため、体感温度は人よりずっと高い。

外に出す場合、風通しのいい日陰がある環境にするのは必須。さらに、荒井靖子院長は「暑すぎる日は、玄関先でもいいので、家の中に入れることを検討してほしい」と呼びかける。

真夏じゃなくても、日陰でも
あらい犬猫病院に聞いた県内で実際に起こった犬の熱中症の事例は以下の通り。
▽真夏のドッグランで走り回った犬が意識を失い、命はとりとめたが重症だった
▽春先から初夏の暑い日、屋内駐車場の車内に数十分置いていった間にぐったりし、命を落とした
近年は春先から熱中症に警戒する必要がある。屋内でも熱中症になる可能性があり、油断は禁物だ。
暑そうに荒く呼吸をしてぐったりしているほか、下痢やおう吐があれば重症という。荒井院長は「ちょっとの時間で急速に悪化し、死んでしまうこともある」と話す。9月に入り、涼しくなってきたが、「たまに暑くなる日は油断しがちなので危険です」。
朝4~5時や夜間に散歩
犬の熱中症は、何より予防が重要だ。暑い日は、散歩の時間を早朝や夜間に変更するといいだろう。
夕方でも地面が熱をため込んでいることがある。荒井院長は「一度、地面のアスファルトやコンクリートを触ってみるといいでしょう」と勧める。
「砂浜をはだしで歩いて、やけどしそうになったことのある人も多いのでは。人が『熱い』と感じれば犬にとっても同じことです」
毎日の天気予報チェック
近年は、屋内でも熱中症になるケースがある。犬用の冷感マット、ネッククーラー、保冷剤を活用するのも有効だ。
エアコンの設定温度は「人がちょうどいいと感じる温度より低めがお勧め」と荒井院長。犬は人より暑がりという。ただ、今年は電気代の値上げで、苦慮した飼い主も多かったようだ。

屋外に出るときは、▽ホースで水をかける▽ビニールプールで水浴びする▽水でぬらしたTシャツを着せる(大型犬)といった対策もある。
