米大リーグ・アスレチックスとマイナー契約を結ぶ右腕・冨岡聖平(桜井高出)が、日本のプロ野球で2軍に該当する「3A」へと昇格した。2020年に契約したものの、コロナ禍でマイナーリーグが中止となり、地元・黒部市などで調整を続けた。翌21年の渡米後も含め、順風満帆とはいかない道を歩んできた冨岡は「着実にメジャーへ近づいている」と手応えを得ている。

想像より良かったマイナー暮らし

 2021年3月、アスレチックスのキャンプ地に合流した冨岡は、マイナー生活に抱いていた心配事が杞憂だったと知る。「日本では、マイナー暮らしは過酷で、食事はパン一切れと牛乳だけ、遠征はバス移動ばかりといったイメージだと思います。シーズンを通し、過酷と思ったことはありません」。練習や試合に関わる際の食事は球団が用意し、栄養バランスも取れていた。私生活の夕食などにも金銭的な補助がある。

最速155キロの直球を軸に、カーブやチェンジアップを織り交ぜる投球が持ち味の冨岡

 冨岡が21~22年にプレーしたランシングはハイA(日本プロ野球の4軍に該当)に属する。本拠地はカナダとの国境に近く自然豊かで、気候的には富山県に近い印象を冨岡は持った。感染予防の目的もあってか、試合などでの長距離移動はなくなっており、経費を削減できた球団は、選手の給与を増額したという。

2022年9月、ランシングは4投手の継投でノーヒットノーランを達成。3番手で登板した冨岡(左から2番目)

 住居は、ホーム球場の近くにアパートを借りるが、長期契約する選手は少なく、数カ月の契約で複数選手によるルームシェアが主流だ。冨岡も1年目は何度も引っ越しを経験し、その都度ルームメイトも変わったが「みんな助けてくれるし、いろんなことを教えてくれる。人間関係では困っていません」と意に介さず。「自分が想像していたより、収入や生活面のフォローもしっかりしている。いい環境でメジャーを目指せると思いました」

 冨岡は2021年を25試合に登板し6勝7敗という成績で終えた。リリーフ志望とチーム首脳陣に伝えていたが、チーム事情で9試合に先発している。「リリーフでの勝利の価値は、先発投手ほどには高くありません。リリーフとしてチームに負けをつけない、0点で抑えることを心掛けました」と振り返る。

藤浪との出会いも糧に

 22年の春季キャンプ、評価を上げた冨岡は

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