Mama-no
土肥 薫(どい かおる)さん

富山県上市町出身。富山短期大学食物栄養学科卒業。養護老人ホームでの栄養士勤務を経て、独立。現在は滑川市を拠点に料理教室やケータリングサービス、食育をテーマにした講演、チルド料理の開発・販売など、食にまつわる事業で幅広く活動中。

 

テーブルに並ぶ彩り豊かなケータリング料理を目の前に、みんなの表情がパッと明るくなる。見て、食べて、思わず笑みがこぼれる“食”を届け続ける2児のママ、土肥さんの想いを聞きました。

ー“食”を仕事にしようと思ったきっかけは?

たくさんの人が集まって、賑やかに食卓を囲むことが多い家庭で育ちました。幼い頃から朝食を作って人に喜んでもらうことが好きで、食事への意識はもともとポジティブでした。学生時代に過食嘔吐を経験したり、怪我をしてしまって入院生活が続いたりした時、改めて食の大切さを体感しました。どんな時も食事が一番の楽しみでした。周りの人たちも、食事の時間はみんなが笑顔になるんですよね。食を通してみんなに笑顔を届けたいと思い、栄養士の道に進むことを決めました。

ー栄養士のスキルを活かして独立した土肥さん。起業の背景は?

最初は養護老人ホームで栄養士として働いていました。施設利用者さんが食事を嬉しそうに食べてくれる姿にやりがいを感じていましたが、子どもが生まれてからは育児と家事の両立がうまくできなくなってしまいました。大きな負担を感じて、自分自身が笑顔になれない日々が続いてしまったのです。家族全員が笑顔で幸せに過ごすためには、まずは自分が笑顔でいることが大切だなと思っています。私と同じように育児との両立に悩む子育て世代のママたちを、食のスキルを生かして助けたいという想いが強くなっていきました。職場を離れる決心をし、まずは離乳食の料理教室を開いてみるところからスタートしました。

 

さまざまなシーンを彩るケータリング料理で、工夫していることは?

料理教室に参加した方からのご縁で、パーティーシーンなどのケータリング料理の依頼が増えていきました。栄養バランスや味の美味しさももちろん大切ですが、まずは見た目で「美味しい!」と思ってもらえるような盛り付けや魅せ方を意識しています。テーブルに並んだ料理が、コミュニケーションのきっかけにもなってもらえたら嬉しいですね。提供する場や食べてくれる人の笑顔を思い浮かべながら、メニューを考えて調理しています。

食に関心がない人が増えつつある若い世代のみなさんにも、見た目の美味しさを入口に、食への興味を持ってもらえると嬉しいです。また、大人は子どもたちに対して「これは食べたらダメ」と言ってしまうこともよくあると思いますが、それでは食事が楽しいものではなくなってしまいます。まずは食事の楽しさを子どもたちや若い世代のみなさんに知ってもらいたいです。いろんな食材を食べてみて、そのなかから“良い食事”を選び取る力を身に付けていける人になってほしいと思います。そのためにも子育て世代への“食”のサポートに取り組んでいきたいです。

ーチルド料理の開発・販売への展開は、大きなチャレンジなのでは?

料理教室で習っても家で作る時間がないという人も多くいました。それでも、偏食を解決したい、栄養のあるものを食べさせたい、レパートリーが少ない、メニューがマンネリ化している、スーパーのお惣菜は食べさせたくないなどのママたちの悩みは尽きません。そこで、全国の子育て世代のみなさんの力になれるように厨房を構えて、お惣菜のチルドを全国に発送するという挑戦を新たに始めました。

特に富山のママたちは、周りの目が気になって「自分が作らなくちゃ」と思っている方が多いと感じています。料理代行にもなかなか頼ることはありません。このチルド料理を通して、子育て世代の“食べ方の選択肢”や、“時間のゆとり”を生み出し、“できない”や“諦め”を無くしていきたいです。

 

今後の展望を教えてください。

食の楽しさや子育て世代へのサポートに取り組みながら、これからは生産者さんの想いをもっと伝えていきたいです。

富山の良質な美味しい食材を全国の方に知ってもらいたいので、なるべく地産地消のものを使ったケータリング料理やお弁当、チルド料理を作っています。スーパーなどに流通させることができない規格外の食材も、生産者さんと直接やり取りをすることで活用するようにしています。

食事の時間は一瞬ですが、一皿の料理の背景にはたくさんの人たちのあたたかい心がこもっています。あたたかい料理と共に、関わったみなさんのぬくもりを届けていきたいです。作り手のみなさんのためにも、“美味しく食べる”ということで食に関わってくれる人たちをどんどん増やしていきたいです。

 

文・徳田琴絵(うみとやまローカルラボ ツアーコーディネーター・富山オタクことちゃん)

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富山オタクことちゃんの編集後記
私が初めて土肥さんと出会ったのは、土肥さんがケータリング料理を担当された食事会でした。一品一品にみんなが感嘆の声をあげ、心が躍ったことをよく覚えています。初めましての人同士も多くいましたが、食事を囲んで大いに盛り上がり楽しい思い出となりました。
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9月23日(土)~24日(日)実施の『うみとやまローカルラボ2023』夏編では、富山県東部で地域活性化に取り組む“ローカルプレイヤー”のみなさんに会いに行く学びの旅を開催します。みなさんのご参加をお待ちしております。
お申込みはこちらから(8月24日まで) ※終了しました。