KEIZO倉庫
石田拓人(いしだ たくと)さん
富山県滑川市出身。2012年、大学時代に海外一人旅育成プログラム「タビイク」を立ち上げ、アジアを中心に旅を続ける。愛媛県弓削島やインドへの移住を経て、コロナ禍により帰国。2021年、滑川市にKEIZO倉庫をオープン。株式会社Backpackers Production代表。

滑川市のKEIZO倉庫を目掛けて、全国からたくさんの旅人が訪れています。旅好きな若者の間で有名な石田拓人さんとは、どんな人物なのでしょう。“旅”を軸に活動を続ける石田さんのこれまでとこれからについて、お話を聞きました。
ー石田さんは学生の頃に起業しているのですね。海外一人旅育成事業を始めたきっかけは?
19歳で“旅”と出会ってから人生が変わっていきました。自分の強みって何だろうと悩んでいた頃に、ある社長さんの講演会で「若いうちに海外に出た方がいい」という言葉を聞いて強く印象に残りました。これをきっかけに友人とふたりでタイへ旅に出かけ、旅先の世界観や人との出会いを通してどんどん“旅”にハマっていきました。
僕一人では海外に行くのは怖かったのですが、一緒に行ってくれた友人や、背中を押してくれた先輩がいたおかげで今の僕がいます。当時の僕と同じように、海外旅の最初の一歩が怖いと感じている人たちの背中を押せるきっかけを作りたいと考えて、20歳の時に「タビイク」というサービスを始めました。最初は趣味で続けていましたが、好きなことを仕事にしたいと思い、大学4年生で会社を立ち上げました。僕自身、旅が好きだからこそ今も事業を継続できています。好きなことに早く出会えてよかったです。

ーKEIZO倉庫をオープンした背景を教えてください。
「タビイク」の他にも、移住したインドで旅行会社を立ち上げて暮らしていたのですが、新型コロナウイルスの流行を機に地元に帰ってきました。
KEIZO倉庫は、もともと僕の祖父が大工の作業場として50年間ほど大切に使ってきた自作の倉庫です。倉庫のことを誇らしそうに話してくれる祖父の姿が幼い頃から印象的だったのですが、祖父が大工を引退してからは長年使われておらず、もったいないと感じていました。せっかく僕が帰ってきたので、祖父が元気な間に倉庫を改修して新しくエネルギーの集まる場所にしようと思いました。
倉庫は自分たちだけで半年間かけて改修しました。旅の繋がりもあって、全国からたくさんの旅好きの仲間たちが手伝いに来てくれたことが嬉しかったです。素人なのでなかなか思うように進まないこともありましたが、みんなで楽しみながら進めることが出来ました。
若い世代の人たちが集まる場所になって、家族全体が喜んでくれていると思います。たまに家族も顔を出してくれます。触れ合いのなかでエネルギーをもらっているのか、家族も若返った気がしています。気づいたら古着も着てくれるようになっていました。

ーKEIZO倉庫は、どんな場所ですか?
現在は古着屋と酒場を営業しています。今後は喫茶店をオープンする予定です。
これまで僕は、誰かが作った目的地を旅して楽しい人生を送ることができました。次はKEIZO倉庫を誰かの目的地にしていきたいです。県外からKEIZO酒場に飲みにだけ来て帰る人もたくさんいます。集まるきっかけを作って、そのなかで富山を知ったり、新しい出会いだったり、更には次の県内の目的地へと繋いでいきたいです。
僕以外のスタッフはみんな県外からの移住者で、最初はみんな遊びに来る感覚で倉庫の改修を手伝ってくれていたのですが、居心地が良くて自然とオープンスタッフになってくれていました。古着屋を任せている店長も、富山にゆかりがないところから僕との繋がりで来てくれました。お店では彼の感性をのびのびと表現してもらっています。これからもKEIZO倉庫を拠点に、誰かのチャレンジしたいことを自由に形にできるような場所を生み出していけると面白いなと思っています。
ー今後の展開を教えてください。
旅をして自由に生きてきたなかで、“帰る場所”があることはとても大切だと感じています。家族や友人がいて安心できる地元という場所があるおかげで、のびのびと活動できています。旅の仕事をメインに頑張りつつ、地元にも少しずつ貢献していきたいです。
滑川には眠っている地域資源がたくさんあって、まだまだもったいないと思うこともあります。プロデュースの仕方など、滑川を観光面から盛り上げるところに携われたらいいなと思っています。
僕がずっと取り組んできた“きっかけ”をつくることの延長線上にKEIZO倉庫があります。KEIZO倉庫は、富山を知らない人たちが富山を訪れる“きっかけ”として存在していきたいです。自分たちがまず楽しめる要素を生み出していきながら、周りにも自然とエネルギーを与えられるような“源泉”になれると嬉しいですね。

文・徳田琴絵(うみとやまローカルラボ ツアーコーディネーター・富山オタクことちゃん)
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富山オタクことちゃんの編集後記
富山を訪ねるきっかけだけでなく、富山でのチャレンジのきっかけも自然な流れで耕している石田さん。「起業したい学生さんがいたらKEIZO倉庫に連れて来てね!」と気さくに話す姿に、たくさんの人の最初の一歩目の背中を押し続けてきた頼もしさを感じました。
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