聖德丸
德田聖一郎(とくだ せいいちろう)さん
愛知県豊田市出身。高校卒業後に地元の自動車メーカーにて勤務。2017年に脱サラし、地域おこし協力隊として富山県朝日町へ移住。泊漁業協同組合の漁師として働く。2021年から「聖德丸」と名付けた自身の船を持ち、独立。6次産業化を目指して奮闘中。

愛知県の自動車メーカーでのサラリーマン生活から大きく飛び出し、朝日町の泊漁港の漁師になった德田さん。新たな進路を切り開いてきた挑戦について聞きました。
ー自動車メーカー勤務から一転、漁師を目指したきっかけは?
地元の愛知県豊田市では、多くの人が自動車関連企業に勤めています。僕も周りと同じ進路を歩んでいましたが、2017年に30歳を迎えて「自分が本当にやりたいことに取り組みたい」という気持ちが芽生えました。
もともと魚を獲ったり食べたりすることが好きだったので、自分が獲った魚を直接届けて喜んでもらえるような漁業をしてみたいと思うようになりました。漁師になるのは難しいと知っていましたが、まずは行動してみようと全国各地の漁業組合に連絡することから始めました。
ー全国の漁港のなかから朝日町を選んだのは、なぜ?
どんな漁業をしたいのかを体験しながら決めるため、北海道や鳥取県、三重県、福井県、和歌山県など全国の漁港を訪ね、一年間かけて漁業体験をしました。大きな漁港では、厳しいルールや漁業権の取得の難しさなど、参入のハードルが高い地域が多かったです。
そんな中、朝日町の泊漁業協同組合では漁師を募集していました。県内で一番小さな漁協です。泊漁協を存続させていくためにも、メンバーのチャレンジを寛容に受け入れてくれる環境がありました。僕が挑戦したい直販も、素潜りも、山の狩猟もできるという条件が揃っていました。最初は不安もありましたが、自分らしくチャレンジできる可能性にかけてみたいと決心しました。

ー朝日町の暮らしをどう感じていますか?
普段は一人で漁に出ていますが、帰ってきてからの作業を地域の人が手伝ってくれることが多いです。会話を交わしたり、お礼に魚を配ったり、人のあたたかさを感じる日々です。
地域おこし協力隊の制度のおかげもあって、地域コミュニティにスムーズに馴染めました。「朝日町に来てくれてありがとう」といろんな方々に声をかけていただいて嬉しかったです。一人だけで普通に移住していたら、ここまでご縁が広がらなかったのではないかと思います。
地域おこし協力隊の3年間では、漁師の仕事について学びながら、イベント出店や直販にも挑戦をさせていただきました。アドバイスをくれたり、一緒に考えて実行してくれたりと地域のみんなが協力してくれるので、のびのびとチャレンジできました。
朝日町だからこそ、やりたいことを叶えられていると思っています。

ー気持ちの変化はありますか?
今は、チャレンジすることが怖くないです。会社を辞めて漁師になるという大きなチャレンジを経験したからこそですね。
例えば、新型コロナウイルス流行期はイベント出店が無くなるなどピンチではありましたが、思考を変えてネット直販に精力的に取り組みました。自宅で食事をする人が増えたこともあり、ネット直販を活用するユーザーが多く、前向きに乗り越えることができました。
新たな行動によって前向きな変化を起こすことができると感じています。
ー朝日町を拠点に今後取り組んでいきたいことは?
地域のために何をしたいかはまだ考えられませんが、僕ができることはみんなに美味しい魚を届けて喜んでもらうことだと思っています。
富山県は地元の愛知県からもアクセスがいいので、将来的には愛知県とも繋がっていきたいなと考えています。僕が獲った魚が愛知県の飲食店やスーパーで、地元のみなさんに食べてもらえるようになっていくと嬉しいですね。
また、僕が移住してきた頃よりも移住者が増えて朝日町が盛り上がっているように感じています。朝日町を訪れる人たちに喜んでもらえるような取り組みにも、これからもどんどん挑戦していきたいです。

文・徳田琴絵(うみとやまローカルラボ ツアーコーディネーター・富山オタクことちゃん)
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富山オタクことちゃんの編集後記
「僕が力になれることがあれば嬉しいです」と笑顔で快くうみとやまローカルラボに参画いただいた德田さん。泊漁業協同組合事務所の壁には、德田さんのメディア掲載記事がズラリ。小さな漁協でのチャレンジが大きく注目されていることをひしひしと感じ、朝日町のみなさんにとっても、きっと誇らしいのだろうなと思いました。
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