多感な時期に経験したことは誰でも忘れがたいものだ。とはいえ、あの頃に戻りたいとは思わない。

イラスト:kumiko yamaguchi
本作は、高校の強豪サッカーチーム「イエロージャケッツ」に所属していた女性たちが抱える秘密を、過去と現在を交錯させ展開するサバイバル・サスペンス。
1996年にチームは航空機墜落事故に巻き込まれ、遭難する。2021年、1年7か月に及んだ遭難生活について口を閉ざす生存者4人の元へ、25年前のことをほのめかす奇妙なマークの描かれたはがきが届く。
どこかの森の奥で極限状態に置かれた少女たちは、思春期特有の悩みや愛情の渇望も相まって冷静さを失う。ある者は獣の毛皮を身に纏い、ある者は雪山を裸足で逃げ惑う。現在の4人もまた、差出人不明のはがきに翻弄され狂った行動をとる。
第1話のタイトルバックで、90年代のロックシーンを代表するバンド「スマッシング・パンプキンズ」の「Today」が流れる。「今日はかつてないほど素晴らしい日 」という歌い出しは、「これ以上悪くならない日」を意味するという。
最終話、再会した4人は同窓会でぎこちなくテーブルを囲む。辛く苦々しい過去を共有し中年になった彼女たちと、わたしは同世代だ。当時は学校のあちこちに派閥があり、必ずどこかに所属しなくてはならないという雰囲気があった。
あれほど過酷ではないにしろ、やはりあの頃に戻りたいとは思わない。
DJ CHIGON 富山市在住。ロックDJパーティ「LOVEBUZZ」のDJ。インディーロックを中心にプレイしている。