「ロックの殿堂」に名を連ねるバンド「ビースティ・ボーイズ」のメンバー、マイク・Dとアドロックが、過去の映像を交え自らの歴史を語るドキュメンタリー。ニューヨークでハードコア・バンドとして結成した彼らが、ラップ・グループとしてデビューし、革新的なキャリアを築き、2012年にメンバーMCAが亡くなるまでの約30年を振り返る。
冒頭で観客が「人生のサウンドトラックだ」と言うように、わたしの人生にも彼らの音楽がそばにあった。10代の時にクラブでよく聴いた曲「Sure Shot」、「Body Movin'」は初めて訪れたラブバズで流れていた。MCAの訃報には、DJとしてレコードをかけ追悼した。熱心に活動を追っていたわけではないが「かっこいい大人」として、いつも気にする存在だった。
過激なライブや発言で暴走した80年代を経て、彼らは1994年発売の「Ill Communication」内で、過去の差別的言動を謝罪する。収録曲「The Update」で「二度としないようなことを過去にやったけど、そこから学んだこともあるから、それはそれで良かったと思う」と省みた。リーダー的存在のMCAは「同じ人間でいるより偽善者でいる方がマシだ」とインタビューで答えている。そんな彼の影響を受け、残されたメンバー2人は今もアメリカで差別と戦う。
我が家の玄関を開けると、彼らのポスターが最初に目に飛び込む。毎日それを見て、時代に沿ってアップデートされた「かっこいい大人」になれているか、わたしは自問自答している。
DJ CHIGON 富山市在住。ロックDJパーティ「LOVEBUZZ」のDJ。インディーロックを中心にプレイしている。