「一流シェフのファミリーレストラン」（Ｄｉｓｎｅｙ＋）

 映画もドラマも、レコードと同じ。「ディグる（探す）」のが好き。気付けばたくさんのサブスク（定額制動画配信サービス）に入っていた。そんな欲張りなＤＪの私がお薦めの配信オリジナル作品を紹介します。

イラスト：kumiko yamaguchi

　本作は超一流店のシェフだったカーミーが故郷へ戻り、亡くなった兄の残したレストラン再建に奮闘するヒューマンドラマ。カーミーは秩序もルールもない店の立て直しに、不仲だった兄との関係修復を重ねる。油まみれの厨房を磨き、レシピを変える。従業員に揃いの青いエプロンを着せ「兄のやり方は忘れろ」と言うが、「わかっていない」と反発される。

　終盤で兄の右腕だったリッチーが「死んだって認めたくなかった」と本音を吐露する場面でハッとした。古いものを新しくすることは良い面ばかりではない。やり方を変えることは、思い出が上書きされること。衝突するたびに「クソったれ！」と叫んだり喚いたりするのは、皆が兄の不在を緩やかに受け入れるため必要なことだったんだろう。

　最終回、厨房に皆が集まる場面でレディオヘッドの「レット・ダウン」が流れる。「君は君の居場所を知っている」という英詞の一節は、兄がカーミーに「居場所（店）を作れ」と囁くよう。何百回と聴いた名曲が新たな響き方で輝く。これだからサブスクは止められない。

https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/the-bear/52m6nx7HoP5F