スポーツや芸能界など、さまざまなジャンルで20代が活躍しています。飲食店だって例外ではありません。数多くはありませんが、県内でも20代の店主が切り盛りするレストランやカフェがあります。それぞれの思いやこだわりを聞きました。「早すぎない?」と思うことなかれ。その行動力と熱意にきっと刺激を受けるはずです。(情報は取材時の内容です)

どーなつとおやつ bel tempo(ベルテンポ)

みんなが笑顔になれるおやつを

店主・井口なつみさん(31)26歳でオープン
「店名はイタリア語で『いい天気だね』という意味です。どんな時でもおやつを食べて元気になってもらえたら、という思いを込めました」

 魚津市の商店街にたたずむドーナツと焼き菓子の店。シンプルなドーナツは、かむほどに優しい甘さがじんわりと広がる。「子どもからお年寄りまで安心して食べられるおやつを」と、国産小麦やきび砂糖、魚津産の卵など材料にこだわる。

「チョコどーなつ」(左、280円)、「プレーンどーなつ」(右、200円) 生地に魚津市特産の加積りんごを練り込み、もちもちの食感に仕上げた

 店主の井口なつみさん(31)は大阪の製菓専門学校を卒業後、古里の魚津にUターンして県内の洋菓子店やパン店で働いた。26歳の時に店をオープンし、出産・育児に伴って2021年秋から1年余りの間、主な業務を妹の野村まなみさんにバトンタッチ。22年11月、本格的に復帰し、2人で切り盛りする。「出産を経て、安心安全なおやつを作りたいという思いが一層強くなりました」と井口さん。食べる人の笑顔を思い浮かべながら、今日も心を込めてドーナツを作っている。

クッキーやマフィンも並ぶ
店内の壁を自分で塗り、カウンターを知人に作ってもらうなどして初期費用を抑えた

夜Cafe ぽんぷく

日本酒の魅力を若い世代に

店主・東 則克さん(30)29歳でオープン
「子どもの頃から親しんだ高岡の街を盛り上げたいです」

 日本酒を若い世代の人にも気軽に楽しんでほしい」。店主の東則克さん(30)は2021年12月、29歳の時に約60種の日本酒をそろえるカフェ&バーをオープン。ランチやスイーツ、一品料理を提供し、楽しく交流してほしいとボードゲームを多彩に用意する。

「オムライスランチ」(1,000円)バターの風味豊かなふわとろの卵とチキンライスが相性ぴったり。サラダ、ドリンクが付く。ランチのみ

 電力会社に勤めていた5年前から「何でもできる若いうちに起業したい」と準備を開始。日本酒好きが高じて取った「きき酒師」の資格を生かすべく飲食店開業を志した。21年夏に退職し、居酒屋やカフェでアルバイトをしてノウハウを学んだ。高岡市の助成金も活用し、高岡大仏近くの市中心部に開店。ほぼ一人で切り盛りするが「全て自己責任で、自分で何でも決められるのが醍醐味です」と笑う。まちなかを盛り上げたいと、イベントの開催にも意欲を見せる。

「トマチー(つくね)」(1,000円) 辛口の日本酒と特によく合う人気メニュー。ニンニクとトマトのソース、つくね、チーズのハーモニーが楽しめる。夜のみ
県内酒蔵の日本酒をメインにそろえる

海風亭

伝統に新たな風を吹き込む

店主・美浪呂哉さん(38)25歳で継ぐ
「受け継がれてきたものをつないでいくことにやりがいがあります」

 あいの風とやま鉄道魚津駅前にある老舗日本料理店。魚津の海の幸をふんだんに取り入れた料理をそろえ、グルメ漫画「美味しんぼ」に登場した名店だ。

「海鮮丼」(1,150円)その日おすすめの9種類の魚介をぜいたくに味わえる。サラダ、小鉢、漬物、みそ汁が付く。平日の昼のみ提供

 5代目で料理長の美浪呂哉さん(38)は25歳で店を継いだ。「両親の助けになりたい」と高校卒業後は金沢市にある料理の専門学校へ進学し、県外のホテルで5年修業を重ねた。「自分にしか出せない表現を海風亭という型に落とし込んでいます」と美浪さん。先代から受け継いだ料理を「さらにおいしく」と日々工夫を重ねる。コロナ禍をきっかけに自宅でも楽しめるようにと、日本料理の技を駆使したポテトチップス「月乃破片」を考案した。2021年8月から受注生産し、全国から好評を得ている。新たな感性で伝統に新風を吹き込む。

「ゲンゲ竜田揚げ」(4本880円) 深海が近海という魚津の鮮度抜群のゲンゲが味わえる。「美味しんぼ」に登場した看板メニュー