マサコはいじめ行為の裏側にある心理について話した。
ハルコはいじめを受けることの悲しさについて話した。

この二人の感想を学級全体で共有し、「いじめっ子」「いじめられっ子」の気持ちを考えることにした。

私は次のように子どもたちに投げかけた。

「これまで、グループごとに『仲間外れ』のテーマでロールプレイに取り組んできました。今日は、すべてのグループがクラス全員の前でロールプレイを発表しました。そして今、『いじめっ子』役のマサコさんと『いじめられっ子』役のハルコさんの感想を聴きました。これから、みなさんの感想を聴きたいと思います」

子どもたちは次々と発言した。その主なものを以下に記す。
 

・初めて「いじめっ子」役になったとき、緊張で小さな声しか出せなかった。でも、いつの間にか大きな声が出せるようになった。自分のほかに何人も「いじめっ子」役の人たちがいてくれたからだと思う。「いじめっ子」は、なぜ、いつも集団になって弱い者いじめをするのか分かった。(フジオ)

・いじめをしている人はいつも笑っている。なぜ笑っているのか分からなかったが、「いじめっ子」役をやってみて分かった。「いじめられっ子」役の人が悲しそうにするのがおもしろくて、もっといじめたくなった。(アキオ)

・マサコさんが「あんなことを言わなきゃよかった」「かわいそうなことをした」と後悔していたけど、私も「いじめっ子」役をやった後で同じ気持ちになった。そして、いじめをするのは嫌だなと思った。(ユウコ)

挿絵・金子浩子

 

・「いじめっ子」役の人から「バカ」「アホ」「消えろ」と言われたとき、怖かった。悔しかった。憎らしかった。ハルコさんの涙には悲しいという気持ちだけではなく、いろんな気持ちが混じり合っていたと思う。(ハルオ)

・私は何度かいじめられたことがある。一番つらかったのは仲良くしていた人たちから無視され、仲間外れにされたときだった。「一人ぼっちだな」「死にたい」と思った。ハルコさんの気持ちがよく分かった。(ユミコ)

・ハルコさんの演技は本当に悲しそうだった。今まで、いろんなことを経験してきたハルコさんにしかできない演技だと思った。(アキコ)

子どもたちがそれぞれの気持ちを正直に話した。
「いじめ」「いじめられ」体験を通して、自分がいじめをしているときはどんな気持ちであったか、自分がいじめられているときはどんな気持であったかを話し合い、共有することができた。

〔付記〕事例はプライバシーへの配慮から登場人物を匿名とし、事実関係についても若干の修正が施してあることをお断りしておきます。

◆寺西 康雄(てらにし・やすお)◆

 富山県内の小・中学校と教育機関に38年間勤務し、カウンセリング指導員、富山県総合教育センター教育相談部長、小学校長等を歴任。定年退職後、富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センターに客員教授として10年間勤務し、内地留学生(小・中・高校教員)のカウンセリング研修を担当。併行して、8年間、小・中学校のスクールカウンセラーを務める。

 現在は富山大人間発達科学研究実践総合センター研究協力員。趣味・特技はけん玉(日本けん玉協会富山支部長、けん玉道3段、指導員ライセンスを所持)。