いじめ防止のために『全校、詩を書く運動』を始めようとしていたとき、新1年生パクくんへの集団いじめが発覚した。本人と保護者から事情を聞き、学校ぐるみで問題解決に取り組むことを約束した。
緊急職員会議を開き、次のような今後の指導方針を立てた。
・全職員でパクくんを見守り、関係する子どもの指導に当たる。
・各学級におけるいじめの実態を把握し、特に指導を要する子どもに焦点を当てて指導を徹底する。
・小集団活動を通して、子ども相互のかかわりを高め、望ましい人間関係を育て、「やさしさの輪」を広げる。
・学校と家庭・地域との連携を一層密にし、情報交換を図る。
私の5年3組でパクくんへの集団いじめについて話をしたところ、一人の目撃者が現れた。ケイコだった。私は彼女にいじめ現場の様子を書いてもらうことにした。ケイコは、放課後、私と何度も対話を重ねながら次のような詩を書き上げた。
男の子が二人、パクくんに話しかけた
「おまえ、どこの国からきたがよ」
「〇〇人やろう!〇〇ちゃ、どんな国よ」
パクくんはだまっていた
目に涙がたまっていた
二人はパクくんの服を手や足でさわった
「おまえ、かっこつけんなよ」と言ってけった
だんだん強く3回けった
パクくんは足をさすりながら涙をぽろりと落とした
男の子たちは、また服をさわり始めた
「ここは日本ながやから〇〇の服なんか着てくるなよ」
そう言ってからげんこつでお腹をたたいた
初めは弱く、次に強く、2回たたいた
パクくんは泣いた
私は思わず言った
「あんたたち、何やっとんがけ」
男の子たちは「やばい!」と言って逃げて行った
パクくんは足をなで、かべによしかかって涙をふいた
足をなでるのをやめるとお腹をさすった
しばらくして、教室に入って行った
どうして、あんなことをするのか
パクくんは1年たったら、〇〇へ帰っていく
そのとき、どんな気持ちだろう
〇〇の友達になんて話すだろう
日本の小学校のこと、日本の子どもたちのこと、
どう言うだろう
学校詩集「つばさ」の発行を予定していた私は創刊号の冒頭にケイコの詩を掲載することにした。校内の「詩のコーナー」にも模造紙に大書し、掲示した。
ケイコの詩に対する反響は大きかった。学校詩集「つばさ」への投稿用ボックスにも多数の子どもたちの詩が投函された。
〔付記〕事例はプライバシーへの配慮から登場人物を匿名とし、事実関係についても若干の修正が施してあることをお断りしておきます。
連載への感想、疑問など、ざっくばらんにお話ししませんか?けん玉もやります!
日時:11月17日(日)午前10時半~正午
会場:北日本新聞越中座(富山市婦中町島本郷10-7)
参加:無料
※ info@receive.conocoto-toyama.jp コノコト編集室へメールでお申し込みください。
お問い合わせ:コノコト編集室(北日本新聞メディアビジネス室)電話076-445-3319(平日9:00~17:00)
◆寺西 康雄(てらにし・やすお)◆
富山県内の小・中学校と教育機関に38年間勤務し、カウンセリング指導員、富山県総合教育センター教育相談部長、小学校長等を歴任。定年退職後、富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センターに客員教授として10年間勤務し、内地留学生(小・中・高校教員)のカウンセリング研修を担当。併行して、8年間、小・中学校のスクールカウンセラーを務める。
現在は富山大人間発達科学研究実践総合センター研究協力員。趣味・特技はけん玉(日本けん玉協会富山支部長、けん玉道3段、指導員ライセンスを所持)。