しばらくぶりの連載で伺ったのは10月10日。1010の数字の並びから「銭湯の日」なんです。月岡団地のほど近くにあるこちらの銭湯は、「お風呂や」の大きな看板が目を引きます。
玄関には仏像が鎮座し、早速心から洗われる気分。そしてロビーを彩るのが特大のスーパーマンにスパイダーマン、天才バカボンなどのフィギュアの数々…。ご主人の相地薫さんの父で、亡くなった先代の良成さんが趣味で集めたコレクションに、薫さんのコレクションも加えたものなんだとか。賑やかな雰囲気に、久しぶりに誘った我が息子の機嫌も上々です。
脱衣場で、ちょっと見慣れない昭和レトロな器具を見つけました。「これドライヤーなんですよ」と、薫さんが自ら実演してみせてくれました。一方、息子は年代物の体重計に興味津々です。単位の表示が「キログラム」と「貫」の両方あり、実際に計ってみた息子は11の数字で止まった針にきょとんとしていました。いろいろと気にするお年頃の息子の名誉のために換算はしないでおきます。
浴場では常連さんと思しき男性が2人、体を洗ったり、湯舟に浸かったりしています。2人で洗いっこした私たちは、3つある浴槽のうち真ん中の湯舟へ。私好みのちょっと熱めのお湯に、のどの奥から思わず声が出てしまいます。後で薫さんに伺った温度は41度。薪で焚いているから、体の芯まで温まるのだそうです。向かって左側の薬湯風呂について薫さんは「皆さん水を入れて温度調節しとられますけど、黙っとるがやちゃ」と人懐っこい笑顔を見せてくれました。
お隣の薬湯風呂に入っていた50代の常連さんに話しかけてみました。子どものころから通っているのだとか。「家に風呂はあるけど、週に3回は入っとるよ」と気持ちよさそうに天井を見上げています。この常連さんからは、サウナ室内や洗い場中央のシャワー設備、照明の一部が最近新しくなったと教えていただきました。
お風呂上りには100円で飲み放題のドリンクバーや、自分で作れるソフトクリームが待っています。そして風呂上りと言えば実はこちらの銭湯、もう一つ珍しいところがあるんです。それは居酒屋が併設されていること。普段は薫さんのお母さんがカウンターに立ち、宴会場もあるんです。ご近所さんは風呂上りに軽く一杯、なんて使い方もあるんだとか。薫さんには調理師の一面もあり、市内の老舗料亭で腕を振るった経験を活かし、家族で銭湯と居酒屋を切り盛りしています。また送迎サービスも行っていて、遠方からのお客さんにも対応しているそうです。
子どもにも大人にも愛される地域の憩いの場所―。また一つ、いい銭湯を見つけました。
【メモ】
〒939-8136 富山市月見町4丁目66
電話… 076-429-2338
営業時間… 13:00~22:30
定休日… 月曜日
【料金】
大人(12歳以上) 440円
中人(6歳以上12歳未満) 140円
小人(6歳未満) 60円
共通入浴回数券(11枚綴り) 4,400円