
―登坂選手は、レスリングを始めた小学校3年生から一貫して、自らの考えで進む道を決め、両親はその思いに寄り添い信じて応援してこられました。そして小学校での日本一、中学校での日本一…と目の前の目標を一つ一つクリアし積み重ねた結果が、リオ五輪の金メダルにつながったことが今回のインタビューで分かってきました。ただ子を信じて応援するには、親にもそれなりの覚悟が必要だったのではないでしょうか。
うちは私と妻、子ども2人の核家族。共働きで、絵莉は生後2か月から保育園に預け、延長保育の日々でした。共働きはただでさえ忙しいのに、レスリングの指導そして遠征、合宿は、時間的にも金銭的にもとても大変です。なので「本当に強くなりたいのか」「本当にやりたいのか」ということを一つ一つ、日々の会話の中で確認していたように思います。「やる気がないなら、やめたほうがいい」というのは、よく言っていました。
親の顔色を見ていては強くなれない
―レスリングのコーチ経験もあるので、様々な親子を見てこられたと思います。
親が子にやらせたいという願望があまりにも強くなると、それは子どもに伝わり、そのうち子どもは親のためにやっているような感じになってくる場合があります。そして何かのきっかけで、子どもが「それなら(スポーツや習い事を)やめようかな」と言い、親の顔色を見るようになっては、親の負けです。やめたくてやめるくらいなら、子どもはその程度の思いだったわけで、続けても伸びないでしょう。「やめたいならやめろ」と言えるぐらいの心持ちで子と接することが、親としては大事なのかもしれません。
もちろん子どもの強くなりたいという気持ちやモチベーションを高める環境づくりや会話は、親だからこその知恵を生かして取り組んでほしいと思います。
―最後にこれからの絵莉さんに望むことは。
幸せな家庭を持ち、楽しい人生だったと思ってもらえる人生を歩んでほしい。もちろん自分も楽しい人生だったと思えるように生きていきたいですね。
