男性中心のイメージが強い建設業で、近藤建設(富山市緑町)は女性の従業員数を増やしている。2005年の5人から現在は15人まで増え、ここ20年で3倍となった。女性活躍を推進する上で、どんなことを心掛け、苦労を乗り越えてきたのか-。昨年秋に富山商工会議所で初の女性副会頭に就いた社長の近藤裕世さん(52)に聞いた。(県立大大学院1年・小野司)
「女性特有の体調面、体力面での配慮は必要だけど、性別を理由にした優遇は女性社員に対しても失礼」。近藤さんはこう力を込める。優遇しなくても女性社員は働ける-。こうした考えに行き着くには、自らが経験したさまざまな苦労があった。
「現場知らなくていい」
富山出身の近藤さんは、異業種を経て、2005年に近藤建設に入った。入社直後、当時社長だった父から「お前は現場を知らなくていい」と言われた。「現場は男性中心の職場」という認識を受け入れ、自分自身も積極的に知ろうとしなかったことを今でも後悔しているという。
08年には「違うステージで会社の役に立ちたい」と考え、富山青年会議所に入会した。当時、社長の娘という立場から会社内での扱われ方に困惑する中、似たような境遇にある先輩会員と出会い、交流していく中でたくさんのことを学んだ。「青年会議所での活動がなければ、今の自分はない」と断言する。

15年、近藤さんは自社の社長に就任した。その翌年には、史上最年少で富山商工会議所女性会の会長に選ばれた。要職に就くと、新たな悩みも生まれ、各種委員会への出席や各企業の役員クラスが集まる会合での発言を求められた。しかし、そうした環境に身を置いて得た人脈や経験は「かけがえのないもの」だと語る。
コロナ禍に考え変化
近藤さんは社長や女性会長を務める中で「強い女性リーダーでなければならない」と思っていたと言い、「自分はアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)の塊だった」とも振り返る。
その考えが変わるきっかけとなったのは、コロナ禍で内省の時間を得たことだった。「社員を大事にしたいという以前に、自分が満たされているのか」。こう自問した時、「理想のリーダー像」を取り繕うのをやめることができた。
気持ちが楽になると、女性社長としてメディアへの露出も以前より増えた。「社長をメディアで見るのがうれしい」と社員から言われたことにも後押しされ、社内にブランドコミュニケーション部という広報活動を行う部署を設置。以降は、等身大の姿で少しずつメディアに出るようにしている。
自分が自然体でいること-。それは社員が「自分が認められていると感じながら成長できる安全な環境」づくりにつながっていった。

建設業界は男性中心というイメージが根強い。実際、近藤建設の若手の女性社員は県内の工業高校出身で、就職活動では約80件ある施工管理の求人の中で「女性の応募を受け付けているのは2社だけだった」と振り返る。そんな中、別の女性社員は「社長が女性だというのが入社の決め手になった」と語る。「現場=怖い男性」というイメージがある中、トップが女性であることが安心感につながった。
近藤建設は、施工管理の仕事の6割を占めるとされる書類作成の業務だけを担う「建設ディレクター」の配置を進めている。また、DXを活用して煩雑な書類管理の一元化や、ペーパーレスの効率的な情報管理も行う。
女性社長の振る舞い 安心感に

今回、男性中心というイメージの建設業界で、女性社長として会社を率いるには、どんな苦労があるのかを知りたいという思いで近藤さんをインタビューした。女性社員が3倍になっている理由は、制度による優遇ではない。社長自らが自然体で振る舞うようになった結果、自身の存在そのものが、女性社員の心理的安全性につながっているのではないかと感じた。
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