空き地や耕作放棄地を活用し、住民同士が野菜や花を育てるコミュニティーガーデンが県内で広がっている。世代を超えた交流や、高齢者の健康維持に役立っているほか、収穫物を加工・販売して地域振興に生かす取り組みもある。学生記者である私の大学のゼミでも、農協と連携したコミュニティーガーデンの取り組みを始めた。運営のヒントを探ろうと、県内の実情を探った。(富山国際大2年・金岡拓海)
参加者同士 和気あいあい
コミュニティーガーデンは、環境保護や食育、地域の絆を深める場として期待されている。日本では1990年代ごろから東京など都市部の市民団体やNPOが取り組むようになり、現在は富山県を含め全国で広まっている。
「住民同士の交流の場。地域活性化につながる取り組みの一つになっている」。立山町釜ケ渕地区でコミュニティーガーデンを運営する「釜ケ渕みらい協議会」の事務局長、大崎喜考さん(45)は取り組みのメリットをこう説明する。

同協議会は国の補助を受け、2023年からコミュニティーガーデンを始めた。約1ヘクタールの耕作放棄地を使い、サツマイモやジャガイモなどを栽培。地元住民だけではなく、地域外からの参加も多いという。8月下旬に現地を訪ねると、参加者が和気あいあいと畑作業を行い、近くを通る富山地方鉄道立山線の列車が近づくと、全員で手を振っていたのが印象的だった。
個人用の農地を借ることもでき、夏野菜を育てる住民も多いという。収穫した野菜は、みんなに食べてもらうのを楽しみにしているそうだ。協議会代表の村井一仁さん(49)は「住民同士の交流が増えたおかげで、少子化など地域の問題について話し合うことも多くなった。意見交換の場になっている」と話す。

住民の交流だけではない。同協議会は収穫したサツマイモを、酒造メーカーの吉乃友酒造(富山市婦中町下井沢)と共に甘酒に加工し、町内のイベントや交流拠点施設の「釜の蔵」「やわやわや」などで販売し、地域おこしにも役立てる。べにはるかとムラサキイモの2種類を展開。甘酒のとろみとサツマイモの甘みとの相性がよく、人気が高いという。2人は「これからも続けていきたい」と言う。

世代を超えた交流の機会に
富山市でも、高齢者の外出機会や、住民が収穫の喜びを分かち合うことで地域コミュニティーの再生が期待できるとして、13年から支援事業を始めている。同市星井町の角川介護予防センターで設置したコミュニティーガーデンでは、地域の宝来長寿会と近隣の園児が花やサツマイモの栽培や収穫を行う。宝来長寿会の広瀬功会長(85)は「高齢になるにつれて外に出る機会が減っていく。若い世代と交流できるコミュニティーガーデン事業を維持していきたい」と話す。

学生記者の私が在籍する富山国際大のゼミでも、JAあおばと連携し、婦中地域でコミュニティーガーデンを始めた。新興住宅地周辺の使われなくなった田んぼを活用して野菜を栽培。地元の子どもたちにも参加してもらい、収穫物は近隣で開催される鵜坂地域食堂に寄付する。看板をピノキオ保育園の園児と作成するなど、コミュニティーガーデンをきっかけにした地域交流を目指している。
地域課題 自分事に
今回取材した立山町釜ケ渕、富山市星井町の二つのコミュニティーガーデンの運営に携わる人々からは、地域を盛り上げたいという強い気持ちが伝わってきた。参加者が地域の課題を自分事として考えるきっかけになっていると感じた。ゼミで運営するコミュニティーガーデンでも、参加者が主体的に携われるような工夫を考えていきたいと思った。コロナ禍で地域行事や住民運動会などの縮小や廃止が相次いでいると聞く。コミュニティーガーデンが新たな交流の機会としてもっと注目されてほしい。
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北日本新聞社は2024年、創刊140周年に合わせて「北日本新聞学生記者クラブ」を発足させました。25年も引き続き行い、県内の大学生が地域課題を取材し、執筆する記事を随時掲載します。