NES(ネス)は、情報通信技術を生かしたさまざまなシステムを構築し、社会のDX化に貢献している。2020年の創業50周年を前に、社名を日本エレクトロニクス・サービスからNESに改め、24年春には社屋を新築した。今月就任した石黒保行社長は、開発力を強みにさらなる業績アップを目指す。
NES株式会社 代表取締役社長 石黒 保行氏
いしぐろ・やすゆき 1972年、富山市生まれ。福井工業大工学部卒。96年に日本エレクトロニクス・サービス(現NES)に入社。主に営業畑を歩み、常務を経て2025年6月6日、社長に就いた。

情報通信技術でDX実現

 ―幅広い分野にサービスを提供している。

 「顧客の要望に応えながら事業を多角化させてきた。基幹システムの構築はもちろん、デジタルサイネージなどの映像・音響システムや、事業所の入退管理といったセキュリティーシステムの構築も行う。防災無線や河川監視システムの導入、太陽光や小水力発電所の整備と制御システムの構築、EV向け急速充電設備の設置なども手掛けている。課題解決策を提案し、システムの設計からソフトの開発、機器の選定と販売、施工、アフターケアまで、バリューチェーンの全ての工程を請け負っている」

 ―企業のDXが急速に進む中、期待している事業は。

 「人手不足対策とセキュリティーへの関心の高まりを背景に、当社独自のRFIDを使った入退管理システムへのニーズが高い。RFIDは無線を使い、非接触でID情報をやり取りする技術。小型の電子タグを車のフロントガラスや従業員のIDカードに装着し、アンテナを設置して入退場のデータを記録する。セキュリティーの強化はもちろん、駐車場ゲートの自動開閉が可能になるため、車両の出入りが多い大規模な事業所では業務の大幅な効率化が見込める。1970年の創業当時から、無線機器、電子計算機の保守、販売に携わってきた知見が今に生きている」
 「電気使用量を自動検針できるスマートメーターがほぼ全戸へ導入され、この通信ネットワークを水道やガスの使用量の把握にも活用できるように、データを変換する技術を開発した。北陸でもすでに利用しているお客さまや自治体があり、今後に期待している。また音声を文字変換してエクセルに記録するシステムも、多くのメーカーで採用されている。製品を触りながら、また移動しながら行う検査業務で、測定値などを読み上げるだけで入力ができる簡便さが評価されている」

新社屋で社員の連携強化

呉羽駅前の新社屋

 ―情報通信技術の進歩は目覚ましい。

 「だからこそ、次に事業展開できる技術を常に用意しておく必要がある。ポイントとなるのが、潜在的なニーズに気付けるかどうかだ。『お客さまに喜んでもらってこそサービスである』というのが私の考え。顧客と徹底的に向き合う中で、ちょっとした雑談にヒントがあるかもしれない。無線通信やソフトのような目に見えないものを、見える価値に変換していくのが我々の仕事だ」

 ―今月6日に社長に就任した。経営にどう取り組んでいくのか。 

 「東日本大震災やコロナ禍など、経営にマイナスの影響を与える出来事も経験してきたが、幅広い事業を手掛けてきたおかげで乗り越えることができた。しかし、多角化が進むにつれて、最も大切な人材をはじめとするリソースが分散しがちという課題も見えてきた。生産性を高めるためにも事業ポートフォリオを精査し、今後は自社の持ち味を発揮できるソフト開発により力を入れていきたい。また社員同士の連携が進むように新社屋のオフィスをワンフロアに集約した。喜びや苦労の共有がやりがいにつながる。社員の心が集う体制づくりに連動し、業績も向上すると考えている」

会社メモ
 1970年、富山市荒川で電子機器サービスデポとして創業。2019年に社名を日本エレクトロニクス・サービスからNESに変更。24年、本社を富山市五福から呉羽町へ移転新築した。情報通信、映像・音響・放送、計測、監視、制御などのシステム構築に関わる企画、設計、施工、保守サービスを提供。金沢市と福井市にも拠点を置き、従業員は関連会社を含め約140人。
 

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