学校から卒業すると、学ぶ機会はそのあと、終わりを迎えてしまうのだろうか。いや、決してそうではない。学ぶ機会はずっと巡って来るのだけれど、学校が目の前からは存在しなくなってしまう。これからはひとりだ。目の前に先生がいなくても、学び続けることは出来る。人生をよりよく充実したものにするために、学び続けたくもある。
ただ、自学自習法を、学校で丁寧に教えることはあまりない。どちらかというと、たいていの場合は、なにか事情があったときに、今日は自習で!と一方的に、先生に言い渡されるだけである。ひとりで学ぶ力の強さは、テストの点数でわかるわけではないが、人生を長い目で見た時に、最も重要な力のひとつである。この本は、自学自習のやり方を、改めて学ぶ必要があると感じた、すべてのひとたちにむけて、大きくひらかれている。

第4章「覚える―ぶらぶら散歩するのがいい」は画期的だった。「なぜ覚えるのは苦痛か」から始まり、勉強にとって欠かせない、覚えるプロセスのために不可欠な、しかし学校の授業などではなかなか語られにくいことが詳細に語られている。覚えることは勉強にとって必須の条件であるはずなのに、覚えることは当然すぎて、覚えられないひとは叱られるだけで終わってしまう。特にわたしは次々と、覚えたことを忘れてしまうタイプだから、目から鱗(うろこ)の発見に満ち溢(あふ)れていた。
《閉塞した部分社会からの孤立を恐れずに有機的連帯を求めるためには、わたしたちは勉強をしつづけなければならない。それを伝えることこそが制度疲労に陥った社会を超えて新たな社会を準備するために、教育が担うべき役割であると思う》
本書のあとがきからの抜粋である。新たな社会の到来のためには、新たな社会のための準備が必要である。これからは、老若男女誰もが、新しいことを覚えて、血肉にしなければならない。
あやと・ゆうき 1991年生まれ。南砺市出身。劇作家・演出家・キュイ主宰。2013年、『止まらない子供たちが轢かれてゆく』で第1回せんだい短編戯曲賞大賞を受賞。