全国の公立小中学校のトイレにある洋式便器の割合は、2023年9月1日時点で68・3%(約91万個)。富山県は平均を大きく上回る86・5%で、都道府県別で1位だった。実は富山県は前回2020年9月1日時点の調査結果でも1位。前回から7ポイント数字を伸ばしてトップを守り、トイレ関連業界からも「素晴らしい数字」と賛辞が上がっている。
調査は文部科学省が実施。家庭のトイレの洋式化が進んでいることを背景に、バリアフリーや防災時の機能強化の観点から、学校のトイレも和式から洋式への交換が進んでいる。全国的にも洋式化率は11・8ポイント増えており、文科省担当者は「避難所にもなる学校で和式は使いづらいとの声があり、多くの自治体が置き換えに取り組んだ」と評価した。
市町村別では、富山市が16年4月1日時点で45・5%だったが、20年9月1日時点では94・1%へと急激に伸び、23年は98・3%。23年の調査結果では富山市に次いで学校数が多い高岡市が、前回49・8%から75・1%まで急増しているほか、黒部市が前回59・3%から77・6%、南砺市が前回71・1%から84・9%と大幅に増えた。
TOTOなどトイレ関連企業でつくる「学校のトイレ研究会」の冨岡千花子事務局長は、富山県が1位だったことについて「素晴らしい結果」と評価。洋式化に熱心な市町村があると、その周辺の自治体でも洋式化が進むケースがあるため、「県内で最も校舎数が多い富山市が熱心に洋式化を進めたことが背景にあるのではないか」と見る。
冨岡事務局長は「富山市では、令和元年に洋式化推進へ予算を確保し進めたと聞いている。その際は、富山市教育委員会とTOTOと地元の改修業者が連携し、工期を短縮するための工法を取り入れて洋式化工事を短期間で終えることができた」と話す。
調査は、校舎や体育館などにある児童生徒が日常的に使うトイレが対象。初回調査の16年には洋式便器の割合が43・3%と和式の方が多かったが、20年度に洋式57%となり、今回も増加傾向が続いた。国は防災機能の強化の観点から、学校トイレの洋式化について25年度末までに95%を達成するという目標を掲げている。全国的に洋式化が進んでいるものの、全国トップの富山県でも86・5%という現状を考えるとかなり高い目標だ。
ただ防災面に限らず、家庭は洋式、学校が和式というギャップがあると、子ども達がトイレを我慢することで健康に影響が出る恐れもある。子どもたちが「学校のトイレは和式だから大の方を我慢した」という経験をせずに済むように、目標達成に向けてさらに整備のペースを加速する必要がありそうだ。
学校研究会は、学校のトイレの「5K(汚い、臭い、暗い、怖い、壊れている)」の解消を目指して1996年に発足。「洋式化」や床に放水せずに清掃する「乾式清掃」ができる環境づくりを推進している。(本田健司)
※グラフは「Flourish」で作成