
とろけるようなワンタン、透き通った淡い色のスープ、縮れた中太麺は「これぞ昭和のあっさり味」だ。魚津のラーメン店、やまや(魚津市真成寺町)の看板メニュー、ワンタンメン。始まりは昭和20年代の屋台で、3代目店主になったいまも、当時の味がそのまま残る。
5月下旬、店を訪ねると、鴨川のせせらぎが聞こえる小さな通りで「やまや」ののれんが揺れていた。漁港にほど近く、漁師をはじめ多くの常連客が通う。店内には若い男女もいた。

「最近はインターネットを見て来たというお客さんが多いんです」。3代目店主の辻輝男(てるお)さん(44)と母の光柄(みつえ)さんが教えてくれた。「今日も山形から来たって人がいました」
鉄工所勤務からラーメン店主へ
昭和20年代創業としているが、正確な時期は分からない。「聞かれると困っちゃう。昔のことはざっくりとしか聞いていなくて。すみません」と辻さん。2代目で父の定男さん、初代の山﨑伊蔵さんは既に亡くなっている。
父の定男さんと初代の山﨑さんに血縁関係はない。定男さんは元々、朝日町の鉄工所に勤めていた。友人だった山﨑さんの息子に頼まれ、畑違いのラーメン店に飛び込んだ。3代目の輝男さんも鉄工関係の会社を脱サラし、父の後を継いだ。
「愛されてきた伝統の味を守りたい」。辻さん父子の思いは一つだった。愛されてきた伝統の味こそ、看板メニューのワンタンメンだ。

かつては真夜中の味
創業当時を知る手がかりが店内にある1枚の写真にある。木製の屋台に立つ初代の山﨑さんが写っていた。店の始まりは屋台だった。昭和30年代から現在の店で営業している。

辻さんが店の常連客に聞いた話では、今から60年ほど前、やまやは真夜中まで営業していた。企業に配達もしていた。
あっさりとした味わいは夜食としてはもちろん、飲み歩いた後の締めにぴったりだ。鴨川沿いはかつて飲み屋がひしめいていたので、ほろ酔いの皆さんにも愛されたことだろう。