エール「羽ばたくあなたに、誰より大きなエールを送ります。」
本音「さみしいのは、すごくしあわせだったから。」
ゆうちゃんへ。母より

エール「ずっと、ずっと、応援しています。」
本音「たぶん、あなたのこと、一生心配してる自信がある。」
つばちゃんへ。くみより

県外に進学・就職する若者へ向けて、保護者から子どもに向けてメッセージを届ける富山県のプロジェクト「I’m Your Home.富山県 富山から旅立つあなたへ 〜親からの「エール」と「本当の気持ち」〜」に寄せられたメッセージの一例だ。

SNSに「泣いてしまう」「号泣するところでした」

県はメッセージを2月22日から3月7日まで、富山駅周辺にある商業施設の外壁フラッグやデジタルサイネージ、エスカレーターなど43か所に掲出。3月10日からは親子へのインタビューも含めたプロジェクトムービーを公開した。

ピンクのフラッグにはエール、白のフラッグには本音が書かれている=富山駅前

すると見た人たちが「もうすぐ一人暮らしを始めて1年のタイミングでこれ.....思わず涙があふれました😭」「…アかぁ…ん😭本日、真ん中娘の小学校卒業式。重ねて、さらに泣いてまう…」などの感想とともにSNSで拡散。娘の大学受験で富山を訪れメッセージを見たという人も「エレベーターに乗りながら号泣するところでした😭」と投稿するなど、富山から全国へじわりと感動が広がっている。

商業施設「マルート」内のエスカレーターや案内板など、あらゆる所にメッセージが貼られた

「有名人にエールもらっても、おれのこと知らんし」

プロジェクトは、若者の県外流出に悩む県が、どうしたら富山の魅力を若者に伝えられるのかを考える中でスタートした。事前調査として県外へ進学・就職する高校生と大学生に県外に行く理由や、どんなメッセージが心に響くかを聞いたところ「県出身の有名人に応援されても、おれのこと知らんし」「地域の人から応援されると嬉しい。でも本当は親から言われるともっと嬉しい」などの声が聞かれたという。

「頑張って」も「寂しい」も伝えたい

一方で、子どもが県外に行くという保護者に今の気持ちを聞いたところ「応援したい」、「成長・成功を願っている」というエールとともに「寂しい」「いつかは富山に戻ってきてほしい」など、複雑な心境が見えてきた。プロジェクトの制作を担当し事前調査も行った大広北陸の岡本達哉さん(37)は「富山の若い人たちに、富山の魅力満載の動画を見せても響かない。やっぱり心に届くは親たちの言葉、しかも本音が必要だと確信しました」と話します。

エールと本音が一緒に書かれていることで、複雑な親心が伝わってくる

人口流出に悩む県が、県外に出ていく若者を応援?

「それでも、庁内で反対意見が出るのではないか心配していました。若者の県外流出に悩む県が、外に出ていく若者にエールを送っていいのかーと」と吐露するのは、同プロジェクトを担当した県広報課の新田祐介さん(34)だ。

自身も大学進学のため県外に出た。雄大な立山連峰、おいしい水、新鮮な魚…、富山の良さに気づいたのは県外に出てからだった。「若い人たちに地元の魅力を押し付けて、県内にとどまらせようとするのは違う。若者の不安に寄り添って応援するほうが『いつでも帰れる場所』として古里を意識してもらえるのではないか」と考え、人口流出対策に関係する課に説明したところ賛同を得たという。

プロジェクトサイトでは、親と子のインタビュー動画なども公開している

そうして出来上がったメッセージはSNSで拡散され、「こんな素敵なエールプロジェクト初めてみました😭😭富山県素晴らしい!」「ちょっと富山県褒めておきますね」などの投稿もあり、県のイメージアップにもつながっている。


まもなく4月。別れの時が迫っています。
巣立ちはまだ先と思っているあなたにも、いずれその時はやってきます。
さあ、子どもに何を伝えますか。