大規模な増築・リノベーションを経て、二世帯住宅となったN邸。古き良きものは残しつつ、新たな空間を既存のスペースや周りの風景となじむように仕上げた。ほっと安らぐ住まいでは、家族7人と1匹の猫が仲むつまじく暮らす。

増築した部分の外壁は、元々の外壁と合わせてアイボリー色のリシン仕上げに。家の横には石敷きの小川が流れる

石敷きの小川や田園風景、近所の寺の大木…。のどかで、どこか懐かしい雰囲気が漂う集落にN邸は立つ。5年前、ご主人のご両親が住むこの家にNさん一家が同居するため、二世帯住宅仕様に増築とリノベーションを行った。

築100年以上という庭の入り口の塀は補強して残した。「大切に守りたい」とNさん一家

築100年以上の塀や、立派な欄間(らんま)が設けられた和室など、これからも大切に受け継いでいきたい部分は残し、新しく造り出した生活空間は、快適に過ごせるようさまざまな工夫が施された。

Nさん世帯は2階で暮らす。増築したLDKは、勾配天井の傾斜に沿って張られたツガの羽目板や、現(あらわ)しの梁(はり)、ヨーロピアンオークの無垢(むく)床など、木をふんだんに使ったカントリー調の装いで、窓の外の田舎の風景と調和し、心が安らぐ。

Nさん世帯が使う2階のLDK。木のぬくもりあふれるナチュラルな空間

家で仕事をする機会が多い奥さまのために、キッチンやサンルームが近いLDKの一角にワークスペースを設けた。3人のお子さまがまだ小さいため、子どもの様子を見ながら仕事ができ、家事への切り替えもしやすいのがうれしい。

立ち上がりに淡い色合いのカラフルなタイルが貼られたキッチン。柔らかい雰囲気のリビング・ダイニングと調和している

リノベーションして生まれ変わった寝室と子ども部屋には畳を敷いた。布団を並べてみんなで寝る時も、床におもちゃを広げて遊ぶ時も、のびのびと心地良く過ごすことができる。

北向きの子ども部屋には心地良い風が入る。畳の上でのびのびと遊ぶ子どもたち
2階の物置をリノベーションして寝室や子ども部屋に。天井が低く、畳敷きでほっと心が落ち着く

子どもたちが1階で祖父母と遊んだり、一緒にお風呂に入ったりするのも日常の光景。「両親との関わりを大切にし、家族のぬくもりを感じながら生活したい」というご夫婦の思いから、各部屋の入り口には透明やすりガラス風のアクリル板の引き戸を採用した。室内の明かりが外に漏れることで、1階と2階が遮断されることなく、常に家族の心が通っている感じがする。

透明とすりガラス風のアクリル板を施したLDK入り口の引き戸。壁はメンテナンスがしやすい塗装壁を採用。丸みをつけて角をなくした壁は、安全かつ優しい雰囲気を醸す

「新旧の融合は、新築にはない良さがあります」と奥さま。Nさん一家はこれからも、家の歴史を守りつつ、新しい部分の経年変化も楽しみながら思い出を紡いでいく。

木の凹凸が面白いテレビ後ろのアクセントウォールはご主人のお気に入り
1階の二間続きの和室はそのまま残した。お客さまをもてなす場としてだけでなく、子どもたちが祖父母と一緒に遊ぶ場、トレーニングの場としても重宝している
1階に増築されたご主人のご両親の寝室。1階の元ある部分と色調を合わせ、心安らぐ空間に仕上げた

 

【取材協力】
クラシ建築設計
富山市新川原町5-21 木町テラス1F
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