株式会社バロンの企画管理室で働く林恵理子さん(39)は、シングルマザーで小学6年生の娘を育てながらフルタイムで働く。

いまの会社に移って1年余り。娘と向き合う時間を大切にしたくて、昨年の3月に転職した。決め手は「ワークライフバランスを重視する社風」だった。社長自ら早帰りを促す徹底ぶりで、遅くても18時には帰宅できる。県の「働き方改革モデル企業」や国の「健康経営優良法人」にも選ばれており、恵まれた職場環境を実感しているという。

理解を得やすい職場の環境

ビルメンテナンスが中心の業務の中で、人事や採用を担当している。働き手が10代から80代まで幅広く、年代に応じたコミュケーションが必要だ。事務仕事が中心だった前職と勝手が異なり、苦労は絶えないが、娘の話にゆっくりと耳を傾けられる心と時間の余裕がある。

「会社が子育て支援にも力を注いでくれているおかげです」
例えば勤務時間だ。以前は午前8時~午後5時だったが、今は午前8時半~午後5時15分にスライドした。通勤ラッシュを避け、子どもの送迎にも時間を充てられるようにとの配慮だという。加えて、職場は女性が7割を占め、周りの理解が得やすく、半日休暇も取得できる。入社1年余りでも気兼ねなくPTAや学校の行事に参加できる。

明るい職場作り心掛ける

ビルメンテナンスの業務は設備点検や警備など多岐にわたる。中でも清掃の仕事は、年齢を重ねても長く務められるという特徴がある。実際にバロンでも幅広い年代の人が活躍している。業務上、かなり年上の人と接する機会も多いが、あえてフランクに話しかけ、明るい職場作りを心掛けている。人事の仕事は採用するだけでなく、仕事を好きになってもらうことも大切な使命の一つと考えているからだ。「失敗してもいいからやってみれば」と何事も応援してくれる上司や同僚に恵まれたことが仕事と向き合う気持ちに変化をもたらしている。「こんな環境だから、自分には何ができるか考え、新しいことにも挑戦してみたいと思えます」

実家の存在も大きい。今は、娘と両親、祖母の5人で暮らしている。家事は分担し、夕食は母が作ってくれる。急な残業でも慌てることがないため、毎日、家族そろって夕食の団らんを過ごしている。祖母は、下校してから塾に通う娘をバス停まで送り迎えしてくれ、帰りの夜道も安心だ。「家族の支えがあるからこそ集中して仕事に取り組むことができます」

娘のおかげで親として成長

「何でも話してくれる娘にも助けられています」。その日の出来事や読んだ本の感想、うれしかったこと…。帰宅して、じっくり話を聞くのが1日の楽しみになっている。娘は将来、医療関係の仕事に就くという目標を持ち、自ら進んで塾に通ったり、進路を調べたりする。早くも進路を考え、目標に向かって頑張っている姿を見ていると、「できる限り応援しなければ」と思うという。
親の自覚を促してもらっているようで、仕事へのやりがいにもつながっている。「娘には、親として、社会人として育ててもらっているような気がしています」