LDKの大きな窓から見渡す里山の景色が開放的なK邸。県産スギを随所に用いた木のぬくもりあふれる空間で、農業を営む30代のご夫婦と2歳の娘さんが、温かな家族のひとときを過ごしている。
富山市郊外の山間部にたたずむK邸。ブラウンに塗装されたスギ板を鎧張りした外観は、素朴な温かみがあり、周囲の風景と調和している。
室内はLDKと主寝室、水回り、ロフトというシンプルな平屋の間取り。県産スギを使用した床や天井、ご夫婦が友人らと塗った漆喰壁など、自然素材をふんだんに取り入れた、木の香り漂うナチュラルな空間に心が安らぐ。
K邸の家づくりは、住宅メーカーに勤務経験があるご主人が理想の間取りなどを記した1枚のスケッチから始まった。一番こだわった部分が、LDKの北側一面に設けられた幅8・5mの出窓だ。「LDKのどこからでも、自然の風景を望めるようにしたかった」とご主人。途中で135度の角度を持たせて視界を広げる、ベンチのように利用できるよう窓枠の奥行きを広くするなど、建築士や大工と意見交換を重ね、美しい里山の景色を可能な限り生活の中に取り込めるよう工夫した。
キッチンの横に勝手口、背面に浴室・洗面所を配置。勝手口には、洗濯機や服や靴などの汚れを落とすスロップシンクを置き、汚れた仕事着を勝手口で脱いで浴室へスムーズにアクセスできるよう動線を考慮した。「ゆっくりお風呂につかって、1日の疲れを取るのが至福のひとときです」と奥さまはにっこり。
暮らし始めて今秋で3年を迎える。ある日の窓辺では、奥さまと娘さんが外に訪れる野生動物を指差して会話を弾ませ、またある時は、沢のせせらぎや木々のざわめき、鳥のさえずりをBGMに親子で昼寝をする―。自然と共存するK邸にはいつも、ゆったりと豊かな時間が流れている。