普段は、家族や友達と楽しくスムーズに話すことができるのに、人前で話すことが苦手というお子さんは、意外と多くおられます。一方、学校現場では、2020年の教育改革で「主体的、対話的で深い学び」が導入され、話し合ったり、自分の考えを発表したりすることがさらに重要視されることになりました。なぜでしょうか。それは人との対話が、子どもたちの考えを深め、学ぶ楽しさを実感し、学んだ知識を生かして問題解決をする力を育むことにつながるためです。

「発表は苦手」というお子さんも、自分の考えを伝えたい!という思いは持っているはず。 苦手な原因を知ることから、解決のためのレッスンをスタートしましょう。

苦手の原因を知る

 

最も多い原因はズバリ「緊張するから」
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どうして緊張するの?
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教わっていないから。
たくさんの目が自分に向き、自分の声や話し方、考えが、どう思われるだろうと心配になり、自信が持てないから。
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声が小さくなり、滑舌も悪く、早口になるため、聞き手に伝わりづらくなる。

これが苦手な子どもたちの、心と体のメカニズムです。

解決への3ステップ

 

① 発声と発音に自信をもとう!

日本語の仮名文字50音には、母音(あいうえお)がついています。
日本語で最も大切な母音を意識して丁寧に発音しましょう。

レッスン☆顔の体操♪

日本語の基本、母音「あ・い・う・え・お」を、大きく口を動かして
顔全体で話してみよう。ポイントは口角を上げて笑顔で!元気よく!

あ・・・目と口を大きく開いて驚いた顔をしてみよう

い・・・口を左右に思いきり開いて、笑ってみよう「いひひ」

う・・・口を思いきり尖らせて、タコの顔をしてみよう

え・・・口を左右に軽く開いて、笑ってみよう。「えへへ」

お・・・口をたてに長く開いて驚いた顔をしてみよう

 

② 滑舌を良くしましょう!

舌の動きを意識することによって、はっきりとわかりやすく話すことができます。

レッスン☆舌のストレッチ♪

舌のストレッチ

口を閉じて、口の中をなめるようにグルグル回してみよう

 

③ 目を見て話しましょう!

話す、伝えることは、聞き手がいるから成立します。
目と目をつなぎ、心と心もつないで緊張にサヨナラ。

レッスン☆ジグザグ目線♪

目の前にいるたくさんの人の目を、
まず、後方右端の人の目を見る、次は、前方左端の人の目を見る・・・というふうに目線をジグザグ動かして話すと、緊張もほぐれ、聞き手も、あなたに好感をもって、より真剣に聞いてくれるようになります。

ひとりでできるステップアップ!

 

☆いつでも、どこでも実況中継!

歩きながら、お風呂に入りながら、いつでもどこでも、今、自分がいる場所、目の前や後ろのものや人、着ている服や靴の色や形、景色、香りや、今の気持ち、考えなど声に出して話してみよう!

(例)食事リポート

「今、私は夜ご飯をいただくところです。良い香りが漂ってきました。今日のメニューは、肉じゃがです。じゃがいも、玉ねぎ、人参、しらたき、牛肉、青ネギなど具だくさんです。お母さんが一生懸命作ってくれました。それでは、いただきます。ジャガイモがほくほくしていて、肉のうま味がしみ込んでいて、う~ん、最高においしいです!」

親子でレッスン

 

☆明るくはっきりあいさつ

おはよう、ありがとう、おやすみなどの挨拶を、子どもの目を見て、いつもより少しハッキリとした口の動きで伝えることをおすすめします。

☆楽しく質疑応答

学校や習い事から配布されたプリントや、子どもの興味がありそうな新聞記事を材料に、内容を子どもに読んで伝えてもらう。「何について?いつ?どんなことが書いてあるの?」質疑応答がおすすめです。

 発音、発声が上達すると、音読、朗読が格段と上達します。すると「こんな読み方ができるんだ!」との喜びから、表情が明るくなり、自信がつくことで姿勢まで良くなります。また吃音で悩んでいたお子さんの親御さんから「声が前に出るようになった」という感想もいただきました。多くの人に自分の考えを伝えることは、たくさんの学びと楽しさをもたらしてくれます。それは親も子も同じ。ぜひ一緒に取り組んでみてくださいね。

 

米原由紀子

米原さん

・こどもアナウンス発声協会認定講師
県内の小学校で「ことばの教室」「アナウンス講座」を行っている。
不定期でこどもアナウンス講座、プライベートレッスンにも取り組む。
元民放テレビ局アナウンサー
北日本新聞 夏休み 森のきょうしつ「基礎から伝わる話し方まで こどもアナウンス講座」講師。お申込みはこちらから。

(イラスト・写真の出典) 
「こどものためのアナウンスブック 発声のきほん」(著者 常世晶子 茂木亜希子)
こどもアナウンス発声協会ホームページhttps://www.genkinakoe.org/