首相指名選挙を巡り異例に次ぐ異例の展開となっている政界。自民党総裁選で高市早苗新総裁が選出された10月4日からビッグニュースが続き、もはや「女性初の自民党総裁」誕生が遠い昔のようにも感じられる。

 目まぐるしい政局のポイントとなった出来事は次の三つだろう。➀公明党が自民に連立離脱を伝達、➁野党間の「玉木首相」を巡る駆け引き活発化、そして➂日本維新の会と自民の連立協議入りだ。こうした激動が2週間足らずで連発したのだから、政治の世界が「一寸先は闇」と言われるのもうなずける。

 国民や有権者に目を移すと、交流サイト(SNS)で活発な議論が見て取れた。物価高で国民生活が圧迫される中で繰り広げられた永田町のドタバタ劇を、多くの利用者が期待や不安が入り交じる心境で見守ったのだろう。

 首相指名選挙は21日召集の臨時国会で実施される。「日本政治の転換点」(自民党関係者)とも言われる節目を前に、ユーザーの多いX(旧ツイッター)のデータと共に怒濤の政局を振り返ってみたい。(共同通信・デジタル取材チーム)

 

 ▽首相指名への関心

 この記事のために実施した一連のX投稿(ポスト)調査は、NTTデータのSNS分析ツール「なずきのおと」を利用した。対象期間はいずれも、高市氏が自民党総裁に選出された10月4日~17日までの2週間としている。

 まず、首相指名選挙に言及したポスト数を紹介する。「首相指名」や「総理指名」といったワードに触れた日本語ポストを抽出すると、計126万件あった。

 日ごとの推移を見ていく。自民党総裁選があった10月4日から3日程度は、投稿数は低調だった。高市氏の首相選出が有力視されており、波乱の可能性は低いと捉えられていたのかもしれない。

 だが、8日になると前日の2万件から7万件に急増。自民、公明による連立継続の雲行きが怪しくなってきたのに加え、7日に立憲民主党の安住淳幹事長が首相指名選挙の投票先について他の野党党首への一本化も視野と発言し、玉木氏指名の可能性が浮上したことが影響したとみられる。

 公明が自民に連立離脱を通告した10日には、ポスト数が16万に達した。高市氏の首相指名に「黄信号」が点灯したことが影響したのだろう。公明の離脱により衆院の議席構成上、立民、維新、国民が協力すれば本当に「玉木首相」が実現可能となり、野党間交渉への注目がにわかに高まったことも大きな要因と考えられる。

 再び大きくポスト数が変動したのは15日。維新の吉村洋文代表(大阪府知事)らが高市氏と会談し、連立協議入りで合意した日だ。

 時系列で見ると、政局の節目に多くのXユーザーが反応したことが分かる。

 

 ▽高市氏、「応援」ワードが頻出

 次に「首相候補」に挙がった主な党首について見ていきたい。党首名と共に「首相」または「総理」と書かれたポストを抽出した。

残り2125文字(全文:3299文字)