インターネットが広がり、ラジオ・テレビ離れが進む。今後の放送局の命運を握るのは、ラジオ番組のネット共同配信サービス「radiko(ラジコ)」と、テレビ版の「TVer(ティーバー)」だろう。ネット時代に放送局はどう対応するのか。両社の社長に就いた2人に聞いた。(共同通信編集委員・原真)

池田卓生(いけだ・たかお)radiko社長

スマホにラジオが入った

 民放99局のラジオ番組をスマートフォンやパソコン向けに配信しているラジコ。2010年に誕生した時、ラジコ社長の池田卓生さんはTBSラジオの番組制作現場にいた。池田さんは、振り返る。

 「当時、若い世代が受信機を買わず、家電店でもラジオ売り場が縮小していました。これから、どうやって聞いてもらおうかと考えていたら、ラジコが登場した。ラジオの未来はラジコが支えていくんだと思いました」

 ラジコができて、「スマホの中にラジオが入った」と池田さんは言う。放送と同時のライブ配信(無料)に加え、放送区域以外の局も聞けるエリアフリー(有料)、過去1週間の番組を楽しめるタイムフリー(無料)が始まり、「聞いてもらえる環境が整っていった」。2024年からは、過去30日間に放送された全国の局の番組を何度でも聞けるダブルプラン(月865円)もスタートしている。

 中でも、池田さんが「非常に大きい」と評価するのが、タイムフリーだ。「昔は、放送は送りっぱなしで、聞き逃したら終わりでした。それが、もう一度、頭から聞けるようになった。PRも変わりました。放送の事後報告にとどまらず、SNSなどで誘引すれば、ラジコで聞いてもらえますから」

局のインフラにしたい

 池田さんが就任するまで、ラジコの社長は代々、広告会社の電通出身だった。初のラジオ局出身のトップとして、池田さんは何を目指すのか。

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