人工知能(AI)の活用が身の回りのさまざまな分野で進んでいる。老朽化した水道管の漏水調査や、クマの出没の監視もAIがしてくれる。落とし物もAIが簡単に探してくれる。(共同通信=沢野林太郎)
【インフラ】AIと人工衛星で水道管の漏水調査(石川県輪島市など)
石川県輪島市は2024年11月、人工衛星の画像データをAIに解析させ、市内に埋設している水道管の漏水箇所を見つけ出す調査をすると決めた。能登半島地震で損傷した水道管の漏水は多数あるとみられ、先端技術を活用し修復を急ぐ。水道管の効率的な交換に役立ち工事費の抑制につながる。
衛星から地表にマイクロ波を照射すると水道水は特有の反射波を返す。水道水は不純物が少なく、河川などの水とは特性が異なるという。AIが反射波を解析して漏水の可能性がある場所を半径約100メートル単位まで絞り込み、実際の配管位置と突き合わせて漏水箇所を特定する。
イスラエルのインフラ解析企業「アステラ」と日本の代理店ジャパン・トゥエンティワン(愛知県豊橋市)が震災復興のため無償で調査を請け負う。水道管が埋まっている路面を歩きながら、機器を使って漏水の音を聞き取る従来の手法と比べ、効率的に作業できるとしている。米英など65カ国の水道事業者に導入され、これまでに約10万件の漏水を確認。国内では長野県や大分県など約160自治体が利用した。
大分県の担当者は「調査費は従来の手法と比べて約5分の1。漏水を素早く見つけ、水資源の有効利用につながる」と語っている。
水道管の老朽化や地震の損傷による漏水は各地で起きている。水道管は一度埋設されると、長期間地中に設置されたままとなり、点検や修理は実際に掘り返さなければできない。
目に見えないものを予測するこのAIの技術は、水道管の交換作業を大幅に効率化する。ほかにも人工衛星の画像をAIで分析し漏水箇所を予測する技術もある。
水道事業は、市町村が個別にしているケースが多い。老朽化や漏水は多くの自治体でも同じ問題だ。国や県が主導して点検、交換作業を進めていくのが望ましい。
【防災】AIでクマ出没24時間監視(石川県小松市など)
石川県小松市や神戸市などは、クマによる人身被害を減らそうと、市街地や農地に設置したカメラの映像をAIが24時間態勢で分析し、住民に出没を知らせるシステムを導入している。クマに遭遇する危険を減らし、安全確保に役立てる。
AI通報システムは通信システム会社の「ほくつう」(金沢市)と北陸電力の「新価値創造研究所」(富山市)が共同で開発した。