自民党が参院選で大敗を喫した。その後は「敗軍の将」石破茂首相の進退を巡り党内対立が続く。そもそも大敗した理由は何なのか。約4時間半に及んだ7月の両院議員懇談会では、報道陣に非公開の中で多くの議員が敗因を語った。派閥裏金事件、失言、保守層の支持離れ、物価高対策など政策の不十分さ、発信力不足―。党が直面する課題はあまりに幅広い。
自民党としても9月2日に参院選を総括した報告書をまとめたが、両院議員懇談会の取材で明らかになった議員の肉声からは、それぞれが選挙戦で痛感した党の課題、大敗の要因が浮かんだ。(共同通信政治部=池田快)
▽尾を引く「負の遺産」
「石破首相には続投してもらいたい。これまでいろいろな負の遺産にさいなまれながら、何とかここまで党を動かしてきた」
7月28日、党本部で開かれた両院議員懇談会。石破首相、森山裕幹事長が冒頭発言を終えた後、ベテランの衆院議員が口火を切った。
負の遺産とは、旧安倍派(清和政策研究会)など派閥による裏金事件に他ならない。敗れた要因は石破首相にあるのではなく、過去からの問題を引きずったためだとの見方だ。旧安倍派のベテラン衆院議員からも「大敗は執行部だけの責任ではない。安倍派の問題にけじめがついていないからだ」との声が出た。
反論も上がった。「負の遺産はあったが、それは歴代も一緒だ」(中堅議員)、「負けたのは『政治とカネ』の問題ではなく、自民党が魅力的に映らなかったことに尽きる」(当選1回の衆院議員)との意見も出た。ある議員は「昨年10月の衆院選、今年6月の東京都議選は、政治とカネが大きな問題だったが、参院選は明確な良い公約が作れなかったことが最大の要因ではないか」と述べ、裏金事件の影響は小さかったとの見方を示した。
今も裏金事件を巡る党内の意見は割れている。参院選でどの程度影響があったのか、今後どう対応していくのかは引き続きの論点だ。
▽失言余波は
選挙戦さなかの7月8日、国会の要職、予算委員長を務めていた鶴保庸介参院議員は地元・和歌山市の集会で「運のいいことに能登で地震があった」と発言し、集中砲火を浴びた。
28日の両院議員懇談会では、能登半島地震の被災地・石川県で参院選を戦った参院議員が声を上げた。「正直、候補者としてあの発言以降、風向きが変わり、厳しくなった。能登の多くの人が傷つき、憤っている」。怒りをぶちまけ、執行部に徹底した検証と毅然とした対応を迫った。同様の意見は、石川県を地元とする他の議員からも寄せられた。「同僚議員の失言は看過できず、許しがたい」
鶴保氏の発言は、主な拠点とは別の地域で一定期間暮らす生活スタイルである「2地域居住」に関連して出た。能登半島地震の被災者が居住地以外で住民票の写しを取得することができるようになったと紹介する中で「運のいいことに」との言葉を使った。2地域居住を進める重要性を説く中で例示する意図だったが、結果的に取り返しのつかない失言につながった。
石川県選出議員は憤る。「避難者は好んで2地域居住しているわけではない」
▽保守層の離反
今回の参院選で躍進した参政党を意識した発言も目立った。