9月は障害者雇用支援月間です。
障害があっても、得意分野を生かし社会で活躍したい…。 そんな思いで、夏に開かれたとやまアビリンピック(障害者技能競技大会)に出場し 金賞に選ばれた二人と、県内企業の障害者雇用の現状を取材しました。
できることを生かせる場所、まだまだたくさんある。
とやまアビリンピック ワード・プロセッサの部 金賞 西本 康次郎 さん (日本オープンシステムズ) |

パソコンスキルを生かし、書類作成などの業務を行う西本さん
昨年の全国アビリンピックの「表計算」種目で1位に当たる金賞を受賞した。同大会における県勢の金賞は25年ぶり5度目。前年に自己最高の銅賞を受賞し、「富山の代表として今度は金メダルを」と自宅で練習を重ねて達成した。
システム開発の日本オープンシステムズ(富山市牛島町)に勤務し、人事総務部で書類作成をはじめとするアシスタント業務全般に携わっている。新卒でIT企業に就職したが、文章理解などに支障を感じ、20代半ばに注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された。就労継続支援施設でパソコンスキルを学び直して講師を務めるようになり、「さまざまな障害を持ったみなさんと一緒に勉強し、仕事をしながら少しずつ自信を取り戻すことができた」。
「私たちには『できないこと』があり、多くの人の手助けが欠かせない一方で『できること』もある。それがニーズとマッチすれば企業でも働ける。できることを生かせる場所は、ニッチではあっても潜在的にまだまだたくさんある」と感じている。
今年は種目を「ワード・プロセッサ」に変更し、とやまアビリンピックに出場し優勝。全国大会に出場する。「全国大会は、互いに健闘をたたえ合う雰囲気があり、自分もまた頑張ろうと思える場」と話し、県選手団や全国から集まる参加者との交流を楽しみにしている。
ものづくりは喜んでもらえて自分も楽しいから好き。
とやまアビリンピック 木工の部 金賞 竹本 朱利 さん (富山高等支援学校3年) |

全国大会に向けて、木箱作りの練習をする竹本さん
富山高等支援学校(富山市坂本)は、軽度知的障害のある生徒の就労支援を目的とした学校で、職業能力を身に付ける学習に力を入れている。1年生で木材加工や食品加工、パソコン入力、清掃など幅広い作業を体験し、2年生からは一つを選択して本格的に学んでいく。ものづくりが好きな竹本さんは木材加工を選び、昨年夏に初めてとやまアビリンピックに出場。2度目の挑戦で金賞に輝き「練習してきたので、うれしかった」とはにかむ。
全国大会の課題は、5時間で蓋付き木箱を作るというもの。木材を必要なサイズに切り、台形の溝を加工して組み立て、くぎを打ち、蓋を作る。0.3ミリ以上の隙間や時間超過で減点されるため、正確さとスピードが求められる。「丁寧に時間内に仕上げることを目標にしている」と話し、夏休み中も練習のため学校に通った。
これまでの作業学習では、班の仲間とベンチを作って販売した。「お客さんに喜んでもらえて、作っているときも楽しいのが木工の好きなところ」と話す。卒業後は製造業の会社への就職を目指し、企業での職業体験にも積極的に取り組んでいる。「働いたら、県外を旅行して巡りたい」。身に付けたスキルを自信に変え、自分らしい未来を切り開いている。
県内で雇用される障害者の人数は過去最高に。
県内企業 半数が法定雇用率未達成
県内で民間企業に雇用される障害者の人数は年々増加している。2024年6月時点で4940.5人となり、過去最高を更新。実雇用率も過去最高の2.36%となった。富山労働局は、法定雇用率の引き上げや、ダイバーシティー(多様性)の考えが社会に浸透したことなどが要因とみている。ただ、法定雇用率を達成していない企業は5割を超え、支援機関や制度の活用を呼びかけている。
実雇用率2.36% 全国平均下回る
障害者雇用促進法では、一定割合以上の障害者を雇用することを義務付けている。現在の法定雇用率は民間企業(常用労働者40人以上)が2.5%、国や地方公共団体が2.8%などとなっている。法定雇用率を満たしていない場合は納付金を徴収される一方、上回っていれば助成金が支給される。
県内の民間企業の実雇用率2.36%は、全国平均の2.41%を下回り、都道府県別では43番目だった。富山労働局は「県内は重工業の企業が多いため、障害者が現場で働くのは危険性が高いと思われているのではないか」とみている。
ミスマッチの解消が課題
法定雇用率を達成できなかった企業は50.6%で、そのうち1人も雇っていない社は半数以上を占める。同局によると、障害者雇用のノウハウが不足する企業がある一方で、障害者にはそれぞれ得手不得手な業務があり、ミスマッチの解消や職場の理解が必要となる。県内には、採用や定着に向け、障害の特性に応じた職務の相談に応じる富山障害者職業センター(富山市桜橋通り)や、家庭訪問などによって障害者や家族の相談を受ける障害者就業・生活支援センターが富山、高岡、新川、砺波の4カ所にあり、障害者や企業の支援を行っている。
来年7月には、民間企業の実雇用率が2.7%に引き上げられる予定だ。同局職業対策課の担当者は「企業だけでは障害者雇用について分からないことがあると思う。サポートする機関があるので、活用してほしい」と話している。
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DEI(ディー・イー・アイ)は、多様性(ダイバーシティ)、公平性(エクイティ)、包括性(インクルージョン)を意味する言葉です。性別、年齢、国籍、出身、性的指向、障害の有無…人と人との間に横たわるさまざまな違い。DEIは、これらを互いに認め合い、それぞれの能力を最大限に発揮できる環境づくりを進める考え方です。北日本新聞社広告キャンペーン「みんなでつなぐDEI」では、誰もが自分らしく輝ける社会について考えます。
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