能登半島地震からの復興への願いを込め、美術家の藤原大さん=神奈川県=が、野菜や雲をモチーフにしたのれん2枚を制作し、富山県射水市串田の勝蓮寺に寄贈した。14日は藤原さんがのれんを設置しながら「この下で昔を思い出したり、これからのことを思ったりして、思い思いに眺めてほしい」と語った。

 藤原さんは大手化粧品メーカーや総合電機メーカーなどのデザインを手がけてきた。近年、自然と人との関係性をテーマにアート作品を制作している。

 約2年前、自身の展覧会で使用する仏具「経金」の音を録音するため、同寺を訪れた。その際、住職の大澤圓隆さん(78)と妻の親子(ちかこ)さん(75)の温かい人柄や、豊かな自然に触れ、心洗われたという。

 昨夏再訪した際に、住職の親族の寺が能登半島地震で全壊したことを知った。勝蓮寺も震災を機に老朽化した山門を再建したばかり。藤原さんは「震災から再び日常を取り戻そうとする歩みに寄り添いたい」と寺に飾るのれんを作ることを提案した。

 一枚は本堂用の幅約4メートル大型判で、青空に浮かぶ雲がモチーフ。真新しい山門用に作られたもう一枚は幅約2メートルで、キュウリやナス、トマトなどの地元で採れる野菜をかわいらしく描く。

 14日は、近所の檀家(だんか)らも駆け付け、約10人で藤原さんと取り付け作業を行った。2枚とも本麻を使っており、境内に吹く夏風を受けて優しく揺れていた。

 藤原さんは「今の時代に合うようにデザインしたので、皆さんがのれんを見てどう思うのかが楽しみだ」と話し、大澤住職は「お寺に足を運んでもらう環境をつくっていただき、喜びを感じている」と満足した。

 15日は午前10時から法要があり、藤原さんが制作に至る思いを語る。その後は、寺の行事などの際に掛ける予定という。