自民・公明両党が大敗した7月の参院選。物価高対応や消費税減税、「選択的夫婦別姓」制度への賛否に加え、参政党などが提起した外国人政策の在り方も論点となった。
こうした議論の活性化にユーチューブやX(旧ツイッター)など交流サイト(SNS)が一役買ったことは想像に難くない。新聞やテレビをあまり見ない層への訴求力は目を見張るものがある。政党や立候補者の多くが参院選でSNSや動画の発信に注力したことからも「SNS選挙」の広がりが見て取れる。
大型選挙を巡っては、昨年の東京都知事選以降、政治家の演説や討論などの一部を編集した「切り抜き動画」が注目されてきた。ユーチューブで「石破首相」などと検索すれば多くの動画がヒットする。見たことがあるという利用者は少なからずいるのではないか。
では、切り抜き動画は参院選でどれだけ視聴され、どのような動画が多く見られたのだろう。実態を探ろうと、ユーチューブのデータを解析した。その上で、視聴数上位を視聴すると、人気動画の実像が浮かび上がってきた。(共同通信参院選データ分析班)
▽視聴トップ100の8割が切り抜き
調査では、まず政党や著名政治家の名前、政策用語やSNSに登場する語句といった参院選関連ワードを約100語選定。これらのいずれかを動画タイトルや説明欄に記載した動画を抽出対象とした。通常国会閉会翌日の6月23日から投開票前日の7月19日までの投稿について、単語ごとに視聴数上位50件まで、20日午前0時時点のデータを取得した。
複数の単語で同じ動画がヒットした場合は重複を除外。その結果、計3000件超の動画データが取得できた。これらを視聴数順に並べ、上位100件の内訳を調べた。
100件のうち81件を切り抜きが占めた。自民、立憲民主両党など政党や立候補者のPR動画15件、ユーチューバーの解説2件、報道機関の動画2件と続いた。PRの一部は、別の動画を視聴する際に自動表示される広告と確認された。
100件の総視聴数は3億4715万回。このうち切り抜き81件の視聴数は計2億6793万回だった。
▽ほぼ第三者の「ショート動画」
切り抜き81件のうち、政党や立候補者公式の投稿は公明党の1件だけ。80件は第三者が運営する計52のチャンネルが作成していた。複数件が100位以内にランクインしたチャンネルは16あった。最も多いケースは6件で、計2289万回視聴された。