石破政権が少数与党として迎えた通常国会が6月22日に閉会した。多くの法案で野党の修正要求を受け入れる対応を取り、与野党からは「熟議の国会だった」と成果を誇る声すら聞こえる。本当に議論は尽くしたのだろうか。そう疑問を持たざるを得ない場面に記者は遭遇した。それは本会議の抜け出しだ。自民党執行部による非公式な会合、与野党議員による議場外での喫煙や談笑…。「まるで学級崩壊」。官僚が顔をしかめて表現する国会議員の姿。果たして許される行為なのか。(共同通信=植田純司)
▽野党の反対討論はほぼスキップ
5月30日午後1時過ぎ、衆院本会議場。開会を知らせるベルの音が国会中に鳴り響くと、与野党の国会議員が着席し、審議が始まった。当初は淡々と議事が進み、約10分が経過した時だった。自民党の森山裕幹事長や小野寺五典政調会長、坂本哲志国対委員長らがぞろぞろと議場を後にしたのだ。向かった先は目と鼻の先にある国会内の自民党幹事長室。選択的夫婦別姓制度を巡り、党の氏制度作業チーム(WT)の逢沢一郎座長らと会合を開くためだった。
夫婦別姓法案を巡っては、立憲民主党などが通常国会に提出したものの、この日の審議とは何ら関係がない。結局、党幹部らは25分程度協議を実施。本会議は45分間ほど開かれたが、そのうち出席したのは計20分程度にとどまった。
実はこの日の議事終盤には年金制度改革法案の採決が控えていた。立民の修正要求をのむことで成立を確実にした「少数与党を象徴する法案」(閣僚経験者)だったが、自民執行部らは共産党などによる反対討論を議場でほぼ聞かずに終わった。幹事長室から退室したベテラン議員が「採決、採決」と駆け足で議場に戻って行く姿にやるせなさを感じた。
▽本会議中に事務所で勉強会も
こうした自民執行部による本会議の裏での会合は5月だけでも4回確認されるなど、先の通常国会で頻繁に開催された。議題は年金法案やデジタル対応、選択的夫婦別姓などさまざまだ。党幹部は「衆院で少数与党に転じた。野党対策などで意識共有する必要性が増えた」と強調する。
議場を抜け出すのは何も自民執行部に限らない。よく目撃されるのは議場外に設置された喫煙所で紫煙をくゆらす姿だ。党の控室に移動して議員同士で談笑することもある。ある野党議員は「本会議には議員が集まるので、いろんな話ができる」と語る。