青い海に囲まれた長崎県の五島列島。人気俳優の川口春奈さんの出身地でもある島々には、約50もの教会が点在している。何百年にも及ぶ迫害と潜伏の末、明治時代になってようやく信教の自由を得たキリシタンたちが、それぞれの集落でれんがや石を自ら運ぶなどして、祈りの場をつくった。
色とりどりの教会は、それぞれの地にしっかりと根を張っている。質素で堅実な美しさ。五島の象徴・椿の花が咲いているようだ。
世界文化遺産で有名な頭ヶ島天主堂や、1945年8月9日の長崎原爆の被爆れんがが使われている旧鯛ノ浦教会の鐘楼、夕陽の絶景ポイント・矢堅崎に近い青砂ヶ浦天主堂など多くの教会を手がけたのは、意外にも、キリスト教徒ではなく、生涯仏教徒だった建築家だ。(共同通信長崎支局長=下江祐成)
▽手に職つけたフランス貴族
1879年に現在の新上五島町で生まれた鉄川与助。「教会建築の父」と評された人物で、潜伏キリシタンが多かった、現在の長崎県などで計28の教会を設計・施工した。
孫のひろ子さんの著書によると、与助は寝る間も惜しんで教会の建築に力を尽くした。
なぜ与助は教会建築に尽力したのか?
著書にヒントがある。
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