博物館に行くと、見上げるほど大きくて迫力のある恐竜や哺乳類の化石に目が向く。しかし、化石は大きいものばかりではない。中には、わずか1ミリにも満たない小さなものもある。一見目立たない存在だが、実は地球の歴史を解き明かす鍵を握っているという。そんな小さな化石の魅力を最大限に引き出し、過去の地球の姿に迫ろうとしている研究者に話を聞いた。(共同通信=岩村賢人)

耳石の化石

 ピンセットの先に捕まれた楕円に近い小さな化石。よく見ると溝のようなものが入っている。「これは魚の耳石です」。そう語るのは海や川など水のある環境の生態系を調査する「株式会社日本海洋生物研究所」の三井翔太さんだ。

 耳石は、脊椎動物の内耳にある、炭酸カルシウムが固まってできた部位。薄くて平たく、長さは数ミリ程度、大きくても1~2センチだという。音を聞いたり体のバランスを保ったりする役割がある。

 どうやって見つけるのか。三井さんによると、地層のある場所に行き、まず堆積物の塊を取り出す。持ち帰った塊を室温で乾燥させた後、泥になるぐらいまで鍋で煮る。そして、ふるいで泥を洗い流し、残ったものを再び乾燥させてトレーの上に広げ、ピンセットで一つずつ拾い出していく。

 一見すると貝殻と見分けが付きにくいが、特徴的な溝が手がかりになる。15キロ程度の堆積物から40~50個見つかる場合もあれば、数個しか見つからないこともある。

教えてくれるのは魚の種類と大昔の海の姿

 魚の種類によって、耳石の形や大きさは異なり、どのグループに属する魚か判別できる。

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