災害時にSNSで飛び交うデマや誤情報に、自治体が懸念を深めている。「数時間以内に大きな地震が来るかもしれない」「動物園からライオンが放たれた」―。事実ではない情報に人々が惑わされ、役所もその対応に追われる。そうなると、自治体が本来するべき災害対応に支障が出かねないからだ。国は法整備することで偽情報や誤情報が生み出すリスクを減らせないかどうか、検討を進めている。しかし、“情報”に規制をかけることは表現の自由と関わる可能性を含んでいる。SNS運営側からの反発は強く、簡単にはいかないようだ。(共同通信=酒井由人)

デマの判別は年々困難に

 スマートフォンが今ほど普及していなかった2011年3月に起きた東日本大震災。それでも「製油所の火災により有害物質が雨と一緒に降る」との書き込みや、原発事故に関連して放射線に関する誤情報が旧ツイッターや「チェーンメール」の形で広がった。

 2016年4月の熊本地震では「動物園からライオンが放たれた」との投稿が画像付きで拡散し、地元の動植物園に電話が殺到して職員が対応に追われた。この騒動は、SNSによるデマが広く知られるきっかけになった。

 2022年9月に静岡県を襲った台風では、AIを使って作られた、街が水没しているように見える写真がネット上に投稿された。真偽を判別するのは容易ではなくなっている。

SNSに載った「道路陥没」、現場はどこに?

 災害時にSNSで拡散するデマや誤った情報について、共同通信が1~2月、全都道府県に調査したところ、43都道府県が災害対応への影響を懸念していると回答した。

 さらに、北海道、石川県、大分県、熊本県は実際の業務に支障が出たと答えた。その中で大分県が挙げた実例は次のようなものだ。

残り1365文字(全文:2094文字)