富山県の立山町特産の寒餅作りが今年、復活した。2023年まで長年作っていた農事組合法人「食彩工房たてやま」(同町金剛寺)を、県内の30~40代の有志でつくるグループが引き継いだ。代表理事に新たに就いた北野貴紘さん(43)=富山市蜷川=は「伝統を守りながら、改めて注目してもらえるようにしたい」と意気込む。

 食彩工房たてやまは1999年に設立。地域の女性が集まり、おこわや餅などの加工品を手がけてきた。中でも、寒餅は設立前から作られていたが、前代表理事の西尾智恵子さん(77)が引退を決め、2023年末でいったん途絶えた。

 富山市内で農業を営む北野さんが23年秋、県を通じて工房の製造設備の引き取りを紹介され、西尾さんと知り合った。寒餅作りなど地域の食の伝統を知ることになり、農家仲間や縫製業者、大工などこれまで衣食住をテーマに事業協力してきた8人で法人を継ぐことにした。

 メンバー全員が本業を持ちながらで、24年は技術を受け継ぐのに手探りの1年だった。それでも、引き続き作業を手伝う西尾さんは「とにかく、やる気がすごい。北野さんのグループに引き継いでもらえて良かったし、応援していきたい」と語る。

 寒餅作りは最盛期を迎えている。北野さんらは伝統を守りつつ地域の農産物を使うなど新たな挑戦も始めた。着色には生産者のつながりで赤ダイコンやクチナシを取り入れ、有機黒糖やヨモギも活用している。無農薬栽培の町産タカキビ、ミカン、一味、レモンなどの新味も用意し、今シーズンは5万枚を生産する。

 事業承継から約1年。地域の生産者と連携した毎月1日の「ついたち餅」なども人気を集めている。北野さんは「昨年は伝統を引き継ぎ、後世につなぐ大切さを実感した1年だった」と振り返り、「新たな挑戦もしていきたい」と話す。