数年寝かせ文化財修復にも

 寒さが厳しい時期に掛け軸用の糊(のり)を作る「寒糊炊き」が29日、富山県砺波市大門の大島表具店であり、砺波、南砺両市の表具師4人が伝統技法で糊を練った。

 雑菌の少ない冬季に仕込んだ寒糊は、数年寝かせることで「古糊」になる。新しい糊より接着力が弱いため、掛け軸の裏打ち紙の貼り合わせに用いるとしなやかな仕上がりになる。はがしやすく素材を傷めないといった利点もあり、文化財修復にも使われる。

 表具師4人は竹原健一さん(69)、大島繁夫さん(66)、田邉博文さん(58)、奥野隆行さん(57)。若い頃に京都の同じ表具店で修業した仲間で、伝統技法を伝承するために実行委員会をつくり、「となみ野寒糊炊き」(北日本新聞社後援)として毎冬行っている。

 この日は富山市や滑川市、射水市の表具師4人も作業を体験。小麦でんぷんを水に溶かして釜で炊き、焦げないように交代で1時間混ぜ続けて寒糊にした。かめに入れ、毎年冬にカビを取り除いたりしながら約10年熟成させ、分け合って使うという。大島さんは「できるまで年月が必要な貴重な糊で、貼り合わせる素材を傷めないことから近年になって良さが見直されている」と話した。