子供たちにエール
SFの要素を取り入れた作品に初挑戦し、選奨に輝いた。「正直なところ自信がなかったので驚いた。とても光栄です」と喜ぶ。
受賞作は、母に捨てられ児童養護施設で暮らす男子高校生が、幼い頃の自分との出会いを通して過去と向き合う物語。「かつての自分に会う」というテーマは長年温めていたもので、複雑な家庭環境で育つ子供たちにエールを送るつもりで書き上げた。作中に出てくる祭りは、現在住んでいる千葉県浦安市の「浦安三社祭」から着想を得た。
母の影響で幼い頃から本に親しんだ。高校1年の時に宮本輝さんの「ドナウの旅人」を読んで感銘を受け「こんな分厚い人間ドラマを書いてみたい」と創作活動を始めた。
普段はプラント設計の会社に勤め、石油タンクの製図を手がける。平日の朝や夜、休日に執筆の時間を設けており「働きながら書くのは大変だが、これがないとつまらない」と語る。
モットーは「物語は面白くないと意味がない」で、現在は臓器移植をテーマにした医療サスペンスの長編に取り組んでいる。「『読み終えるのがもったいない』と読者に思ってもらえる小説を作るのが目標」と意気込んだ。
◆プロフィル◆ すずき・あさこ 本名・鈴木麻子。1978年川崎市生まれ。明星大人文学部卒。会社員。2023年第57回北日本文学賞最終候補。