若鶴酒造(砺波市三郎丸)の稲垣貴彦社長が、角川新書から「ジャパニーズウイスキー入門 現場から見た熱狂の舞台裏」を出版した。同社の三郎丸蒸留所再興の歩みを紹介しながら、ここ10年で国内の蒸留所数が約10倍となっているブームの実情を解説。ジャパニーズウイスキーを名乗れる「基準」の整備の遅れなど課題も指摘し、一過性のブームに終わらせないための方策を提言した。

 1部は、竹鶴政孝に始まる日本ウイスキーの100年の歴史や、ウイスキーへの理解が深まる基礎知識などを紹介。2部は、三郎丸蒸留所の再生の物語として、稲垣氏が家業である若鶴酒造に入った2015年以降のチャレンジを描いた。「ウイスキーを知ることで、読後はおいしく感じられる本を目指した」と言う。

 本書の読みどころとなるのが、ウイスキー業界が抱える課題への鋭い指摘だ。

 法的には輸入原酒を瓶詰めしたものもジャパニーズウイスキーとして販売できる。業界団体が2021年に自主基準を設けたが、運用が問われている。大量製造できるのが特徴で、ブレンドに使う「グレーンウイスキー」を手がけるのが、国内では寡占状態にある大手だけで、小規模な蒸留所に供給されないことも挙げた。

 その上で、日本のウイスキーを産業として確立するには業界各社の連携、協力が不可欠だとして、業界全体を底上げするためのさまざまな具体策を提言。稲垣氏は「次の100年をどう進むか。危機感を持って書いた」と話している。

 14日午後2時から、文苑堂書店富山豊田店でトークイベントがある。