不登校や引きこもりなど子どもの問題に悩む親たちとの面談を多数行っている医師で臨床心理士の田中茂樹さん(奈良在住)が、富山市内で講演しました。「子どもに小言を言わず、優しくして大丈夫」「あれこれ指示を出すのは甘やかし」という内容に、受講者からは「目からうろこが落ちた」との感想とともに、質問も多数上がりました。今回はQ&Aを紹介します。

【質問】 小学生の子どもが朝起きられず、登校班に間に合わなくなる。班長さんに迷惑をかけてしまうので、どうしても口を出してしまいます。
(画像提供:PIXTA)

【回答】 うちの子たちも班長さんを待たせたり、迎えにきてもらったり、おいていかれたり。また、班長になったら遅れる子を呼びに行ったりしてました。あの黄色い旗。今となっては懐かしい朝の景色です。思い出せば、ただ微笑ましいのに、あの頃は送り出すのに必死で、なんであんなにいらいらしてたんだろうと思います。

いろいろな場合があるとは思いますが、ひとつ気になったのは「班長さんに迷惑をかけてしまうので、どうしても口を出してしまう」というところです。これは一見、子どもを起こさなければいけない、もっともな理由のように聞こえます。しかし、子育ての悩みの相談を長く受け続けてきて、このようなフレーズによく出会うので「ちょっと待てよ」と感じました。

起きる、起きないは自分で決めるべき

子どもは、起きるか起きないか、いつ起きるのかなどについて、自分で決めるべきです。食べるか食べないか、行くか行かないかも同じです。自分にとって大切な行動を自分で決めることは、自立への大切なステップです。子どもが自立していくことは、親にとってうれしいと同時にさみしいことです。なんでも親が助けてやっていた時間がすぎさっていくことは、子どもとの別れを意味するからです。

干渉するもっともらしい理由が「班長への迷惑」

なので、いろいろな理由をみつけて、親は子どもに干渉しようとします。子どもに干渉する自分の行動を正当化します。(心理学では合理化といいます。)おそらく質問された人も、子どもは自分で起きるべきだ、と十分わかっておられるのだと思います。それでも、自分の手が子どもから離れる寂しさもあって、班長さんへの迷惑という理由を引っ張ってきて、葛藤されているのではないでしょうか。

「明日からお父さんは(お母さんは)もう起こすのをやめるよ」と淡々と話しましょう。そして班長さんには「うちの子、なかなか起きないのよ。ごめんね」と声をかけておくぐらいの手助けはしてもいいかと思います。

親の声掛けがエネルギーに?

もう少し書いておくと、いろいろと親に言われること、かまわれることも、子どもにとっては、親からの愛情をもらっているということです。「早くしなさい、もう!」と小言を言われている場面でも、お母さんは自分のことを気にかけてくれていることに変わりはありません。

朝のゆううつな気分、起きたくない、行きたくない思い。しんどさ。それを一人で向き合うのはやりきれなくて、だらだらすることで、お母さんの声掛けをもらうのが、パターンになっているのかもしれません。かまってもらえる。そうやってエネルギーを得て、なんとか出ていけている。間に合うように起きては、お母さんに小言をもらえないので、エネルギーがたりません。

「〇〇しなさい!」の代わりに愛情を

そうであるなら、親の側の気持ちの安定のためには、もっとストレートに愛情を、つまりエネルギーを子どもにあたえてあげたらいいと思います。「早くしなさい!」のかわりに、「○○(子どもの名前)のこと、大好き~!」と、ぎゅーっとだきしめるとか。「夜、ハンバーグだからね!」と好きなメニューの予告とか。

子どもが、遅刻しかけるという、ややこしい方法で求めているものを、先手をとってたっぷり与えてしまう。そういうのは、やってみる価値はあると思います。子どもも嬉しいですし、親も気分がよくなりますよ。

たなか・しげき 1965年東京都生まれ。京都大医学部卒。仁愛大人間学部心理学科教授などを経て、現在は佐保川診療所長。著書に「子どもを信じること」(さいはて社)。