大相撲夏場所で初優勝した朝乃山関の地元・富山市呉羽町には、関取がよく通った銭湯があります。それがマルトミ鉱泉です。
あの興奮冷めやらぬうちに、ホットな場所をご紹介したい(銭湯だけに…)。そんな思いで「湯」と大きく書かれた暖簾(のれん)をくぐります。


 玄関では「朝乃山関 優勝 おめでとう」の飾りが出迎えてくれます。手作りの花飾りがなんとも温かい。そして番台には、先日富山市内で行われた優勝パレードの写真とサインが。
 番台のおかみさん・中野里都子さんによれば、入門前からよく利用してくれていたのだとか。朝乃山関のことを石橋君と本名で呼んでいます。

 朝乃山関ゆかりの湯に浸かり、うちの子も立派に成長してくれたらなあ…。そんな親の思いなど知る由もなく、マイペースな息子は脱衣場へ。
「俺の裸、絶対撮らんでよ」
「はいはい、撮りませんよ」


 平日夜の9時を過ぎて、お客さんの姿も少なくなった脱衣場は結構広々としています。回転翼がくるくる回る天井は赤や緑、黄色など大正レトロの趣きで、古き良き銭湯の情緒を醸し出しています。かまぼこ型の天井と白いタイル壁の効果でしょうか、浴場も広々と感じます。

 さて“塩”対応の息子の興味を引くには、私が子どもの頃に父に教えてもらったあの技を使うしかありません。
ケロリン桶に石鹸を塗ったタオルをかぶせ、桶の縁に口をつけて勢いよく空気を吹き込む。するとタオルから宝石のような泡が沸き上がってくるのです。
「わーすごい、それ、おじいちゃんにやってもらったことあるよ」
案の定、息子は泡に飛びついてくれました。小学5年生、まだまだ子どもです。


 ひとしきり泡で遊んだ息子の体をしっかり洗い、3つある浴槽のうち、ぶくぶく泡立つジャグジーの浴槽に入ります。男湯は入口を背にして右から薬湯、ジャグジーのような泡風呂、ジェットバスの順で並んでいます。真ん中のジャグジーは、体の大きな関取でもゆったりと足を伸ばせる広さです。

 そしてこの銭湯のもう一つの自慢が大窓の外に広がる日本庭園。滝あり、錦鯉の泳ぐ池あり、水車あり…。
鉄分を含む程よい温度の湯に浸かって庭を眺めると、仕事の疲れがゆるゆるとほどけていくのが分かります。私としてはカルストーンサウナにも入りたいところですが、息子は先にさっさと上がり、私が脱衣場を出たころには、休憩室のマンガでくつろいでいました。
「さあ、帰ろうか」

 朝乃山関を育んだ「マルトミ鉱泉」。
屋根の上には大きな月が昇り始めています。
「お父さんってさあ、会社で偉いん?」
「ぜんぜん偉くないよ」
「やっぱりね~」
息子との距離もちょっぴり近づく月夜です。


【メモ】
〒930-0138 富山市呉羽町6068-21
TEL.076-423-5471
電話番号: 076-436-6245 
営業時間: [月~木]14:00~23:00 [土・日]13:00~23:00 
定休日: 金曜日
駐車台数: 50台 料金

【料金】
大人(12歳以上)  420円
中人(6歳以上12歳未満)  130円
小人(6歳未満)  60円
共通入浴回数券(11枚綴り)  4,200円
駐車台数…50台