男の子に人気の職業、バス運転手。大きなバスを安全に、そして自在に運転する姿は、男の子たちの憧れの的です。なかでも路線バスは、地域住民の足として親しまれています。今回は富山の公共交通を担う「富山地方鉄道」に勤める坂口健さん(29)に話を聞きました。

坂口健さん

−バスの運転手になりたいと思ったきっかけは?

 もともと車が好きで、富山大学在学中に普通自動車免許を取得し、マニュアルの軽自動車を買いました。運転がすごく楽しくて、バスやトラックなどの大型車もいつかは運転できるようになれたらなと漠然と思っていました。

車の整備を自分でできるようになりたいとの思いから、故郷の岐阜に帰って自動車用品店に就職。6年後、学生時代から交際していた女性との結婚を機に、富山で暮らすことになりました。そんな時、富山地方鉄道のバスに貼られていたバス運転手の募集広告を見つけたんです。

—家族は応援してくれましたか?

 正直、富山に来ることになった時、仕事についてはノープランでした(笑)。バス運転手の募集広告を見た後は「これしかない」と、その他の就職活動は一切しませんでした。妻からは「事故が心配」と反対されましたが、何とか説得して、2017年の10月に入社しました。

会社には、バスの運転に必要な大型2種免許を持って入社される方もいますが、私のように持っていないケースもあります。社内には免許取得にかかる約40万円の費用を負担してくれる制度があり、これを利用しました。

—免許取得は順調でしたか?

 教習所では、人工呼吸や止血などの応急救護も含む学科と技能教習を受けました。1番難しかったのは狭い道を鋭角に曲がる技術です。大きな車体でハンドルを切り返せるのは2回まで。その2回でうまく曲がらなければならないのが、想像以上に大変でした。約40日間で免許を取得できたので、まずまず順調だったのではないでしょうか。教習所に通う以外の時間は、営業所の電話番や事務作業の手伝いなどをしながら、安全運行の意識を高める訓練をしました。

—本格的にバス運転手としてデビューしたのは?

 当社は観光バスや高速バスなど、複数の業務担当がありますが、私は、2018年2月から路線バスを運転しています。今は富山市四方や高岡市、滑川市を走行しています。勤務体系は、4日連続勤務して1日休暇を繰り返す「4勤1休」です。

 朝の6時前に出社し、アルコールチェック・点呼を終えてから出発までの30分の間に、運行ルートの確認、車両点検、点検の結果報告、始発の確認などを行います。終了時間は午後7時か8時ですが、途中に営業所で長めの休憩をとって仮眠をしたりするので、実働は8時間くらいでしょうか。

 

—うれしかった出来事や、仕事のやりがいを感じる事は?

 路線バスは年配の方や学生さんら、地域の人々の日常生活の支えになっていることが1番のやりがいです。好きなことを仕事にしているので、モチベーションも高く、安全と定時運行のため、常に緊張感を持って働いています。

まだまだ新米ですが、病院に行きたいおばあちゃんに最寄りのバス停を教えてあげたとき、お礼にと、笑顔であめをもらいました。お客さまとのコミュニケーションをより円滑に行えるようになれば、さらにやりがいを感じることができる仕事だと思います。