シティーポップの名曲として愛される「どうぞこのまま」のヒットから約半世紀。シンガー・ソングライターの丸山圭子がニューアルバム「彩色兼美」を完成させた。「理屈ではない音楽の力で自分の背中も押してくれる作品を作りたかった」

 高校時代はフォーク少女。コンテストを経て、フォークバンドに所属しつつソロシンガーとしても活動。「ジャジーな感じのポップスが好きでフォークソングだけでくくられるとちょっと違う」。洗練されたニューミュージックの時代が訪れ「やりたかったのはこっちだった」と飛びついた。

 1976年発売の「どうぞこのまま」でイメージしたのはフランス映画に出てくるようなアンニュイな女性像。ボサノバのリズムから古い映画音楽のような弦楽器の音色まで自ら編曲家に提案し、コーラスのアレンジに山下達郎を起用。「譜面を持って達郎さんの実家にお願いに行ったんです」

 それまで作ったフォーク調と雰囲気が違ったため、周囲に「次のレコードに収録したら」と言われても押し切った。「ヒットなんて予想だにしていなかった。でも今は、一番自分らしい曲じゃないかなと思っています」

 同曲ヒット後は他のアーティストへの楽曲提供に加え、洗足学園音楽大などで後進の指導にも当たった。「マカロニえんぴつ」のボーカル、はっとりは教え子という。

 「愛することの尊さを底辺に置いて書いた」という新譜を携えてのライブでは、息子でベーシストのサトウレイと教え子でピアニストの穴水佑輔と共演。「年を重ねて強がることがなくなった」と自然体で歌い続ける。