バレーボールSVリーグ女子のKUROBEアクアフェアリーズ富山でチームコーディネーターを務める丸山貴也氏が9月21日、63歳で死去した。丸山氏は、アクアにとって国内トップリーグ初参戦となるVリーグ1部(V1)2018-19シーズンに監督就任し、4シーズンにわたって指揮を執った。取材メモに残る丸山氏らの言葉には、バレーを愛し、人を愛し、人から愛される気だてがにじむ。
アクアで20年ぶり監督就任

長野県出身の丸山氏は1984年に筑波大を卒業後、日立製作所女子チームのコーチに就任。83-84シーズンに日本リーグ3連覇を達成した強豪で、指導ノウハウを蓄積した。チームの大黒柱で同シーズンのリーグMVPに輝いた江上由美は、84年のロサンゼルス五輪日本代表でキャプテンとして躍動した。丸山氏もアシスタントコーチとして代表に参加し、銅メダル獲得を成し遂げている。
現役引退した江上は、86年に新設された小田急ジュノーの監督に就任する。同年、丸山氏は江上と結婚し、87年から12年間、小田急のコーチとして尽力した。98-99シーズンのリーグ開幕前、このシーズン限りでの小田急休部が発表される。監督に昇格した丸山氏だったが、地盤の崩れたチームを立て直すことは難しく、18戦全敗でシーズンを終えた。
監督業はこの1シーズンのみで、以降は中学・高校・大学のチームでの臨時コーチや、幅広い世代を対象にした競技普及活動に従事している。2018年春、アクアのチーム強化アドバイザーとしてフロント入り。18-19シーズンから監督を任されている。20年ぶりに監督の肩書を得た丸山氏は、取材に対しブランクの認識を隠さなかった。
「選手の気質は変わってきていると思います。かつては監督が命じることを選手がこなすものでした。今は練習するにしても、『こういう目的で練習する』と説明しないと、選手の技術は伸びません。私は古いタイプの指導者ではありますが、口で説明できるタイプでもあります」

娘の紗季、新監督に心中複雑
チームには、在籍5年目でキャプテン3年目となる次女・紗季がおり、丸山氏は「父兄として、ずっとチームは見ていました」とはにかんだ表情で語っていた。
紗季はアクアでプレーを続け、21年春に現役引退。その半年後、ビーチバレーに転向し、アスリート活動を再開した。現在はビーチバレー日本代表6選手に名を連ねている。丸山氏が小田急退団後に指導した学校には、紗季在学時の大和南高や日本体育大も含まれており、「父娘でコーチと選手という間柄」は経験済みだった。それでも、父のアクア監督就任について、当時の紗季は揺れる心中を述べている。