高岡市伏木地区の国宝勝興寺と伏木気象資料館、伏木北前船資料館にアート作品を展示する「ふしきの『ふ』芸術祭」が28日、開幕した。現代アーティストと地元の障害のある作家ら計29人が出品。地区内の伝統的な建物に絵画やインスタレーション(空間芸術)などさまざまなアート作品が並び、能登半島地震で被災した同地区を彩った。10月5日まで。

 勝興寺では震災復興への祈りを込めたインスタレーションなどが並んだ。岡部俊彦さん(砺波市)の「隠判讃金本完真(いんぱんさんこんほんかんしん)」は空間をいっぱいに使い、肉体や物質を超越した精神世界を表現。撮影用のバックスクリーンのほか瓶や仕出し箱などの廃材も活用した展示に多くの人が見入った。

 伏木北前船資料館では、林樹吹さん(高岡支援学校高等部3年)の作品「Sutra of Numbers and formula」などを紹介。能登半島地震で自宅が傾く被害を受けたという林さんは、まるで模様のように数字や数式がぎっしりと描かれたノートを展示した。作品を見た伏木小6年の森本結子さん(12)は「いろいろな数字が使われていて自由さを感じた」と話した。

 芸術祭は、能登半島地震からの復興や共生社会の実現を目指して、地元自治会や経済団体などでつくる実行委員会が初めて開いた。北日本新聞社協力。

林さん(人間国宝内定)の3点並ぶ

 勝興寺では、国重要無形文化財保持者(人間国宝)への認定が内定した漆芸家で、伏木地区に工房を構える林曉(さとる)さんの作品3点を特別展示している。

 「乾漆朱溜塗盤(かんしつしゅだめぬりばん)」「乾漆蓮花食籠(かんしつれんかじきろう)」「乾漆朱塗合子(かんしつしゅぬりごうす)『螺(ら)』」が会場に並んだ。

 このうち「乾漆朱塗合子『螺』」は、巻き貝のような流線が施された造形と、乾漆技法を用いた艶やかさを備えた作品。来場者は足を止めて眺めていた。